一橋貴明は今日機嫌が良かったので、社員を早退させた。
車は一橋家の本邸へと向かい、鈴木月瑠は道中ずっと眠っていた。
一橋貴明は手を伸ばして鈴木月瑠のシートベルトを外し、低く磁性のある声で言った。「ベイビー、家に着いたよ。抱っこして上まで行って休ませてあげようか?」
鈴木月瑠は目を細めて、一橋貴明の顔に向かってあくびをした。「お腹すいた、ご飯食べたい。」
「わかった。」
一橋貴明は優しい笑みを浮かべながら、彼女の手のひらの肉を摘んだ。「ご飯を食べてから私の部屋で休もう。夜は帰らないの?」
「夜帰らないって本気?」
鈴木月瑠は妖艶な目尻を上げ、唇に浮かぶ笑みは冷ややかで、何か含みがあるようだった。
一橋貴明は笑って言った。「不安なの?」
「違うわ。」
鈴木月瑠は形の良い唇の端を上げ、顎を彼の顎にすり寄せ、意味深な笑みを浮かべた。「私自身の自制心が足りなくて、あなたを困らせちゃうんじゃないかって心配なの。」