第634章 この生涯、彼女を裏切らない

こちらでは、鈴木月瑠が一橋貴明のLINEに返信を終えたところで、メルソンの敬意を込めた声が耳に届いた。「神医様、大統領がお会いになりたいとのことです。」

今度は敬称まで付けてきた。

「ケーキを食べ終わらせてください。」

鈴木月瑠はスプーンでゆっくりとケーキを食べ、表情は淡々として、全く急ぐ様子はなかった。

メルソンは口角を引きつらせたが、何も言わなかった。

若い女の子だが、その雰囲気は安定していて、大統領さえも気にかけていない。こんなに面子を立てない人はいない。

数分待って、鈴木月瑠はようやくケーキを食べ終わり、立ち上がってゆっくりと邸内へ向かった。

メルト大統領は大病を経験し、顔色は非常に弱々しく見えたが、その骨の中に秘めた威厳には影響がなかった。

青みがかった瞳の中には、鋭い光が宿っていた。

「私を治療したのは君か?」

メルソンは鈴木月瑠への賞賛を隠さなかった。「日本人は本当に青は藍より出でて藍より青し、まさか神医がこんなにも若いとは。」

前回の安田家のパーティーの時、メルトは鈴木月瑠に会っていなかったので、彼女の身分を知らなかった。

鈴木月瑠はベッドの横に椅子を引き寄せて座り、平坦な口調で「大統領、お体の具合はいかがですか?」と尋ねた。

メルトは真剣に答えた。「とても眠く、体が脱力している。」

「正常です。眠ければお休みください。」

鈴木月瑠は軽く頷き、メルトが眠るのを我慢していることを察して、少し間を置いて「手を出してください、もう一度脈を診させていただきます」と言った。

メルトは急いで手首を差し出した。

鈴木月瑠は指先で脈を押さえ、しばらくしてから離し、低い声で「大きな問題はありません。半月ほど丁寧に養生すれば大丈夫です。頭を使いすぎないように注意してください」と言った。

メルトは我慢できずに尋ねた。「半月?薬は必要ないのですか?」

鈴木月瑠は口角を少し上げた。「飲んでも飲まなくても同じです。もし不安なら漢方薬を数剤出せますが、追加料金がかかります。」

傍らの伊藤様は額に手を当てた。

さすが月瑠姉!大統領からまで金を巻き上げようとしている!

「特に問題がないようでしたら、診察料の精算をお願いします。急いでいるので。」鈴木月瑠はゆっくりと立ち上がり、手をポケットに入れた。