遠藤音美の表情が急に暗くなり、眉をひそめた。
顔や体の傷のことを思い出すと、怒りが込み上げてきた。
「鈴木月瑠、何しに来たの?」遠藤音美は冷たい声で言い、眉を上げ、冷たい殺気を漂わせていた。
鈴木月瑠は気ままに歩き、遠藤音美を見向きもせず、直接斉田勝の方へ向かった。
遠藤音美は一瞬固まり、表情がさらに険しくなった。
他の人々は鈴木月瑠の名前を聞いて、彼女のことを少し思い出したようだった。
遠藤音美は氷のような目で鈴木月瑠を見つめ、自分を無視する態度に腹を立てていた。
彼女はいらだたしげに鈴木月瑠を見て言った。「鈴木月瑠、誰に許可もらって病室に入ってきたの?警備員がどうして部外者を勝手に入れたの?」
ここはVIP病室で、外には警備員が立っていて、関係者以外は入れないはずだった。
鈴木月瑠はいったいどうやって入ってきたのだろう?
遠藤音美は不機嫌な表情で、警備員を呼んで鈴木月瑠を追い出そうとした時、斉田勝が口を開いた。
「音美、でたらめを言うな。月瑠は師匠の親友だ」斉田勝は春風のような優しい声で言った。他の人々に対する態度とは全く違っていた。
彼は手招きして鈴木月瑠を呼んだ。
彼の周りに集まっていた弟子たちは、思わず道を開けた。
鈴木月瑠は近づいて、斉田勝と橋下香里に挨拶をした。「斉田おじさん、橋下おばさん」
「月瑠、彼氏が送ってきてくれたの?どうして上がってこなかったの?」
橋下香里は笑顔で鈴木月瑠を見て、自分の隣に座らせた。「喉が渇いているでしょう?お水を注ごうか。あなたの好きなお菓子もあるわよ」
鈴木月瑠は控えめな態度で、淡々とした口調で答えた。「結構です、橋下おばさん。食事は済ませてきました」
橋下香里が鈴木月瑠にこれほど親しげな態度を見せるのを見て、皆は一瞬驚いた。
彼らは斉田勝の前に立っているだけなのに、橋下香里は鈴木月瑠を隣に座らせている……
師匠は友人を待っていると言っていたが、鈴木月瑠が待っていた友人だったのか?
鈴木月瑠はまだ若いのに?
そして遠藤音美の表情は完全に凍りついて、呆然とした目で鈴木月瑠を見つめ、そして斉田勝を見て、もう言葉が出てこないようだった。
斉田勝は咳払いをして、厳かな口調で言い始めた。「皆さんがここに揃ったところで、始めましょう」