第659章 妹が会いたがっている

鈴木月瑠は言った。「巫族のことは気にしないで。まだ時期が熟していないから、今の問題を片付けてから、この件を解決するつもりよ」

彼女はまだ、お兄さんと話をする時間を見つける必要があった。巫霊が目覚めるのを待たなければならない。

鈴木月瑠と一橋貴明は今夜の車で出発する予定で、ちょうど鳳紅裳の訓練に付き合える日が一日あった。

林由綺が訓練場に行くと、一橋貴明と中村少華が若者たちの3キロ走を監督していた。

「この元気いっぱいの子供たちを見ていると、自分を思い出すわ」と林由綺は中村少華の横に立ち、微かに微笑んだ。

かつて、彼女は必死になってイーグル突撃隊に入隊しようとした。この男性と肩を並べて戦いたかったのだ。

中村少華は林由綺に反応せず、時折、視線の端で鳳紅裳を見ていた。

山中京は中村少華が隊列を見ているのに気づき、自然と同じ方向を見た。

鳳紅裳と南麗は並んで走っており、南麗の隣には鈴木月瑠がいた。林由綺は鈴木月瑠を知っていたので、無意識に南麗を中村少華の彼女だと思い込んでしまった。

そのため、林由綺の表情が微妙に変化した。

厳安雄は中村少華の彼女がとても綺麗だと言っていたが、南麗を見る限り、そこまで綺麗には見えなかった。鈴木月瑠や、額に朱砂痣のある少女と比べると、かなり見劣りした。

南麗...一橋天矢が母方の妹だと言っていたような気がする。

名門ではないものの、一橋天矢は一橋家の分家だった。つまり、南麗は一橋貴明とも親戚関係にあるということだ。

この点だけでも、林由綺は完全に及ばなかった。

林由綺は何事もないかのように視線を戻し、唇の端に皮肉な笑みを浮かべた。

自分を慰めるための他の理由を探そうとしたが、全く自分を納得させることができず、どう考えても納得がいかなかった。

笛が鳴ると、全員が隊列に戻った。

中村少華が午後の科目について説明している時、林由綺は思わず彼を見つめてしまった。

深緑色の迷彩服姿は、光に照らされて神々しく見えた。

こんなに優秀な男性なら、誰だって諦めたくないはずだ。

林由綺は彼のためにイーグル突撃隊に入った。中村少華が当時、彼女を泥沼から救い出してくれたからだ。

彼こそが、彼女に光明を与えてくれた人だった。