第649章 拒否

鈴木月瑠は自分の気持ちを整理した後、何事もなかったかのように笑って、ゆっくりとチケットを戻した。「そうですね、私の思い過ごしでした」

一橋家が何か言う前に、斉田勝は一橋大御爺さんに挨拶をした。「一橋大御爺さんが目覚められたと聞いていましたが、お伺いしたかったのですが、私の体調が良くなくて、遅れてしまいました」

「お久しぶりです」

一橋大御爺さんは斉田勝との旧知の仲で、心配そうに尋ねた。「前回手術をされたと聞きましたが、今はいかがですか？」

斉田勝は穏やかに笑って答えた。「月瑠のおかげで、ほぼ回復しました」

少し間を置いて、彼は傍らの鈴木月瑠を見つめ、目に笑みを浮かべながら続けた。「月瑠は私にとって半分の娘のようなものです。私と妻の今生の最大の心残りは、娘を授かれなかったことですが、月瑠が私たち夫婦の願いを叶えてくれました」