鈴木月瑠は中村お母さんの相手をするのが面倒で、連絡先を開いて大江のぶあきの電話番号を探し出し、かけた。
相手はすぐに電話に出た。
鈴木月瑠が先に口を開き、いつもの冷たい声で言った。「私よ。帝都にいる?」
「わかった。位置情報を送るから、来てくれる?」
会話は極めて簡潔で、中村お父さんと中村お母さんは何が何だかわからなかった。
鈴木月瑠は大江のぶあきに電話をかけているの?
そう思った瞬間、中村お母さんは信じられないという様子で首を振った。
大江のぶあきに連絡すると言っただけで、彼の電話番号を手に入れられるはずがない?
私を三歳児だと思っているの?
中村お母さんは足を組んで、ゆっくりと言った。「そう、大江弁護士に電話したんなら、私からは連絡しないわ」
「どんなインチキ弁護士が来るのか、見物ね」彼女は向かい側を面白そうに見つめた。
一橋貴明が大江のぶあきに連絡を取るならまだ信憑性があるが、一橋貴明はそこに座ったままで反応を示さなかった。
鈴木月瑠が連絡を取ったのは、きっと偽物の弁護士でしょう。
十数分待って、中村お母さんは待ちきれなくなり、意地悪く言った。「大江弁護士がすぐ来るって言ったじゃない。今まで誰も来てないわね」
「私の娘を治してくれれば、この件は不問に付すことを考えてもいいわよ。どう?」中村霜の手のことを思うと、中村お母さんも焦っていた。
「うるさい」
中村少華は中村お母さんを横目で見て、毒のある言葉を吐いた。「たった今の時間で、中村霜の葬式の準備でもしてるの?」
松本旻が遠慮なく笑い声を上げた。
中村お母さんは即座に激怒し、罵ろうとした時、会議室のドアがノックされた。
「鈴木月瑠さんはいらっしゃいますか?」男性の声で、少し緊張した様子が伝わってきた。
中村お母さんは思わずドアの方を見た。
中村少華は余裕そうに中村お母さんを見て、無関心そうに言った。「大江弁護士に会いたかったんでしょう?来たわよ、ドアを開けなさいよ」
中村お母さんがドアを少し開けると、大江のぶあきの冷たい表情が全員の目に入った。
三十代で、とても強い雰囲気を持っていた。
「大江弁護士!」
中村お母さんは思わず目を見開き、背筋がピンと伸びた。
大江のぶあきが本当に来た!
本当に鈴木月瑠が呼んだの?