こちらでは、遠藤母さんが中村楽に話しかけていた。「月瑠ちゃん、もう遠藤家に戻ってきたんだから、音美とは姉妹なのよ。過去に起きた不愉快なことは、もう気にしないでね。あなたはまだ若いから分からないかもしれないけど、私たちの年になれば、家族の大切さが分かるわ」
「私たちがいなくなった後も、兄弟姉妹で相談し合えるでしょう」
話し過ぎて、遠藤母さんは唇が乾いてきて、舌で舐めた。
鈴木月瑠は相変わらず無関心そうに、だるそうに言った。「私は彼女とは親しくないから、気にすることもないわ。私には自分の家族がいるから、彼女と相談する必要もないわ」
遠藤母さん:「……」
おそらく鈴木月瑠にこのように言い返されることに慣れていたのか、遠藤母さんはすぐに気持ちを立て直した。
軽く咳払いをして、本題に入った。「言いたいのは、あなたと音美は興味が違うってことよ。書道の評価なんて、あなたはろくな字も書けないでしょう」
「それに、この前小泉先生があなたを高く評価したのも、あなたのお祖父さんのおかげで、あなたの実力で認められたわけじゃないわ」
「私たちは家族なんだから、音美に謝ることで関係が悪くなるのが心配だわ。だから、このままにしておきましょう」
これを聞いて、鈴木月瑠は眉をひそめた。
お金を払いたくないということ?
遠藤母さんは鈴木月瑠が黙っているのを見て、続けた。「どうせ遠藤家のお金は全部あなたのものなんだから、家族なのに、そんな細かいことを気にする必要はないでしょう!」
彼女は最近このことばかり考えていた。もし鈴木月瑠がまた不正をして、お金を失ったらどうしよう?
この気まぐれな子は少なくないのに、万が一のことが心配だった。
遠藤母さんはまだ話し続けていた。「あなたが気分を悪くしているのは分かるけど、ただの小さな競争だから、わざわざ……」
「叔母さん」
遠藤信次が突然遠藤母さんの話を遮った。白い肌の少年は無造作な笑みを浮かべ、淡々とした口調で言った。「月瑠はまだ競技に出てもいないのに、どうして負けると分かるんですか。叔母さんは月瑠に敵意を持っているように見えます。長老として、もう少し立場をわきまえたほうがいいですよ」
彼は遠藤家の四番目の家系の子供だが、遠藤家とはあまり付き合いがなく、15歳になってやっと国内に戻ってきた。性格は遠藤信之とは違っていた。