第642話 大ニュース

助手が最後の作品箱を運んできて、一つの巻物を机の上に広げた。

清水秋は期待せずに見たが、その作品を見た途端、表情が一変し、携帯を落としてしまった。

携帯を拾う暇もなく、スタッフを押しのけて、眼鏡を手に取り、その作品に飛びついて見た。

「この作品は……」

清水秋は拡大鏡を持つ手が震えていた。「雲書ではなく、梅花小楷だ。素晴らしい、これこそSランクに相応しい。」

梅花小楷と雲書の風格は異なるものの、この梅花小楷は筆の運びが龍のように流れ、その中に雲書の風采が垣間見える。

他の会長たちも集まってきて、同じように驚きの表情を浮かべた。

「鈴木?」

清水秋は急いで右下の署名を見たが、眉をひそめた。「名前がないじゃないか?」

助手が傍らで言った。「今回の評価に参加した鈴木姓の方は、百八十人以上いますよ。」

では、これは一体誰の作品なのか?

「何をぼんやりしているんだ、早くこの方の身元を確認しろ!」清水秋は目に興奮の光を宿し、自ら動き出したいほどだった。

スタッフたちは再び忙しく動き始め、既に評価済みの書道作品を探し、申込情報と照合し始めた。

三十分後、スタッフはようやく鈴木月瑠の申込情報を見つけた。「副會長、これは鈴木月瑠さんの作品だと思われます。」

清水秋は一瞬固まり、すぐに鈴木家の宴会での出来事を思い出した。「そういえば、鈴木家の宴会で、小泉青山のじじいが千里長江図を奪っていったな。」

あの時の長江図には、梅花小楷と雲書があった。

つまり、小泉青山は大きな掘り出し物を手に入れたということだ!

「劉さんがあれを自慢げに見せびらかしていたのを覚えていますよ。どうやら、鈴木月瑠さんは本当に隠れた実力者だったようですね。」他の人々も同意した。

これを聞いた清水秋は、すぐにでも翼が生えて鈴木家に飛んでいきたい気持ちだった。

考えた末、彼は鈴木月瑠に電話をかけることにした。

鈴木月瑠は松本たちと麻雀をしている最中に、清水秋からの電話を受けた。

彼女は麻雀に集中しながら、スピーカーフォンにして、向こうから清水秋の水を絞れそうな優しい声が聞こえてきた。「もしもし、東京書道協会の副會長の清水秋ですが、鈴木月瑠さんでしょうか?」