司会者が審査員に採点を求めようとした時、清水秋が突然立ち上がり、「試合を一時中断してください。小原会長が到着しました」と言った。
清水秋は小原舟を迎えに行き、遠藤音美が鈴木月瑠の弟子を詐称していた件について、誇張して小原舟に話した。
傍らには日本画協会の小泉青山もいた。
小泉青山はこの話を聞いて、小原舟以上に興奮した。「なんだって?鈴木月瑠さんの弟子を名乗る奴がいるだと?厚かましい、本当に恥知らずだな!私が行って引き裂いてやる!」
「何を興奮してるんだ!」
小原舟は小泉青山の額を叩き、目を見開いて怒った。「これは私の月瑠姉の問題だ。お前が出しゃばる必要はない。」
前回、小泉青山は運良く月瑠の出来立ての千里長江の作品を手に入れたが、彼が遅れて行ったため、月瑠の髪の毛一本も見られなかった。
そして、小泉青山が目の前で自慢げに話すのを見るしかなかった!
鈴木月瑠が帝都に戻ってから、次々と正体が明かされ、さらに小泉青山が頻繁に月瑠のところへ絵や書を買いに行くようになり、そのうちに月瑠の身分を知るようになった。
もちろん、月瑠が有力者たちと密接な関係にあることを知っただけで、国内最年少のアカデミー会員という正体は依然として隠されたままだった。
この時、会場内はほとんど音がしなくなり、全員が靴底が床に触れる音をはっきりと聞くことができた。
全員が顔を上げて見ると、人民服を着た小原舟が歩いてきた。
小原舟は若く、40歳前後で、人民服姿が彼の落ち着きをより一層引き立て、髪も完璧に整えられていた。
拍手が再び響き渡り、小原舟は月瑠に一瞬だけ目を向けた後、すぐに視線を戻し、会長席に座った。
そして小泉青山は厚かましくも月瑠の側に座った。
司会者は興奮して口を開いた。「小原会長がお見えになりましたので、会長にこの作品の講評をお願いしたいと思います。」
遠藤音美は急に緊張し、深く息を吸い込んだ。胸の中の心臓が激しく鼓動していた。
小原舟はその作品を見もせずに、淡々と口を開いた。「この作品の講評を私がするのは適切ではありません。これは易安上人の雲書ですから。」
この言葉は深い意味を持っていたが、聴衆はすぐには理解できなかった。