宴会場の外に出ると、空気がずっと新鮮になった。残念ながら雨が降っていた。
鈴木月瑠は傘を取り、雨霧の中を慎重に歩きながら、道端でタクシーを拾って帰ろうとした。
まだ交差点に着かないうちに、子供のわんわん泣く声が聞こえてきた。
泣き声が風雨の音と混ざって彼女の耳に響いた。振り向くと、ホテルの側門のガラスの外に、4歳ほどの男の子が縮こまっているのが見えた。
子供は頭からつま先まで雨に濡れていて、髪の毛はびしょびしょに額に張り付き、両目は細めて、全身が震えていた。
この春の雨水は冷たく、こんな風に濡れたら、絶対に風邪をひいてしまう。
鈴木月瑠は近づいていった。「坊や、どうしてここに一人でいるの?お父さんとお母さんは?」
「うわーん!」
子供は濡れた瞳を上げて彼女を見た。その目はとても美しく、瞳の中には霧がかかっていて、見ている人の心を痛めた。
彼は鈴木月瑠を見ると、突然彼女の胸に飛び込んで、大声で泣き始めた。
「ママ!会いたかったよ!」
子供は泣きながら、小さな頭を彼女の胸に押し付けた。彼女は子供をあやした経験がまったくなく、どうしていいかわからなかった。
「坊や、人違いだよ。私はあなたのママじゃないよ。家はどこ?送ってあげるから。」
「違う、あなたがママだよ!ママ!ずっと探してたんだよ!」
小さな子は四肢を使って自然に鈴木月瑠の体によじ登り、彼女の首をしっかりと抱きしめた。
彼女は窒息しそうになった。
彼女は息を詰めながら言った。「いい子だから、まず離してくれる?ママだと言うのはそう簡単なことじゃないよ…」
しかし、体にしがみついていた小さな子は突然何の反応もしなくなった。
彼女が振り向くと、子供が彼女の肩で眠っているのが見えた。触ってみると、小さな子の額が少し熱かった。
彼女はすぐに何も考えず、子供を抱えて近くの診療所に駆け込んだ。
そして彼女の肩にしがみついていた子供は、こっそりと片目を開け、目に悪戯っぽい光を宿していた。
鈴木月瑠は子供の世話をしたことがなく、医師の指示に従って、一晩中手忙しく世話をした。
夜が明けかけた頃、彼女はようやくベッドの横で少し目を閉じた。
一方、一橋諭知は一晩ぐっすり眠った。
小さな子は伸びをして目を開け、すぐにベッドの横に伏せている人を見つけた。