「鈴木部長、どうしましょう——」
米子は憂鬱そうな顔で彼女のオフィスに入ってきた。
「希崎のマネージャーに連絡したんですけど、相手は三流の小さな会社とは協力しないって言うんです。うぅ、希崎との写真を撮るという夢が、こうして砕け散りました……」
鈴木月瑠は顔を上げ、淡々と言った。「相手に、私たちが一橋グループ傘下の子会社だと伝えたの?」
「相手は、一橋グループには何百もの子会社があるけど、私たちなんてどの葱にも数えられないって……」米子は眉をひそめ、「どうやら、代理人を新しく探さないといけないようです」
もし希崎の写真や動画を見ていなかったら、鈴木月瑠は何も感じなかっただろう。
しかし昨日、彼女はスマホを持って30分以上見ていた。彼女は確信していた、希崎こそが彼女が探している人物だと。
希崎だけが、スマートホーム製品の代表としてふさわしい。
彼女は書類を閉じ、立ち上がって言った。「米子、商談契約書を準備して、私と一緒に希崎の事務所に行きましょう」
「わあ、鈴木部長、あなたが直接出向くんですね、素晴らしい!きっと成功しますよ!」
米子は興奮して商談契約書を手に取り、鈴木月瑠の後をぴょんぴょんと跳ねるように会社を出た。
二人はタクシーで市の中心部にあるインターナショナルビルへ直行した。
ここは海浜市最大のエンターテイメント会社の本社で、希崎はこの会社に所属していた。
二人が車を降りると、国際プラザには人の輪が幾重にも重なり、入り口は完全に塞がれていた。
米子はすぐに好奇心から通行人の一人を引き止めて尋ねた。「何かあったんですか?」
「あなたたちそれも知らないで、何しに来たの?場所取りするだけ無駄よ」通行人はとても不機嫌そうに言った。「5分後に希崎のファンミーティングがあるの。ファンじゃないなら早く離れなさい!」
「ああ!希崎のファンミーティングなんですね!」
米子はすぐに興奮し、鈴木月瑠の手を引いて喜びの悲鳴を上げた。
鈴木月瑠は黒山の人だかりを見て、今日は絶対に中に入れないことを悟った。
明日また来なければならないようだ。
鈴木月瑠が帰ろうとしているのを見て取ったのか、米子はすぐに懇願した。「鈴木部長、遠くからでいいから希崎を一目見させてください。実物を間近で見たことがないんです。一目だけでいいから、お願いします」