第737章 ファンクラブ

「静かに。」

舞台の上の王子様は眉をひそめ、冷たく一言言った。

瞬間、会場は水を打ったように静かになった。

鈴木月瑠は目を丸くした。

たった4歳の子供なのに、こんなにもオーラがあり、たった二文字で数千人の女性を黙らせることができるなんて。

本当にすごい!

こんなにもファンに愛されるのも納得だ!

彼女は追っかけなどしない人間だったが、この子の顔立ちとオーラに少し魅了されてしまった!

万人の視線を浴びながら、希崎は手のマイクを後ろのアシスタントに投げ、足を踏み出し、階段を降りて、ファンの群れの中へと歩いていった。

彼の後ろのマネージャーはすぐに焦った:「希崎、崎兄さん、降りちゃダメ!」

ファンは好きであればあるほど狂気的になる。希崎が降りていけば、きっとファンに引き裂かれてしまうだろう。

「シーッ!」

希崎は振り返り、マネージャーに向かって静かにするよう手振りをした。

このジェスチャーが出た瞬間、下のファンたちはまた熱狂した。

彼女たちの希崎は、どんな動きをしても可愛くて、心臓が止まりそうになるほどだった。

「おりこうさんに、騒がないで。」

希崎はゆっくりと口を開いた。

彼の声には魔力があるかのようで、邪気を帯びており、熱狂的なファンたちをこうも素直に静かにさせた。

押さえつけられていた鈴木月瑠も、心に清風が流れるような、安心感を覚えた。

希崎が通る場所では、人々は自然と道を開けた。

手の届くところにいるアイドルを見て、叫びたい、抱きしめたいと思いながらも、ファンたちはそれを必死に抑えていた。

希崎は彼女たちにおりこうにするよう言ったのだ。

彼女たちは大人なのだから、子供よりもおりこうでなければならない。

希崎はファンの奥深くへと歩き続け、後ろには心配そうなマネージャーとアシスタント、そして近すぎず遠すぎない距離でボディーガードが守っていた。

幸い、ここまでの道のりで狂気的なファンに遭遇することはなかった。

ドキドキ!

ドキドキ!

維姉さんの心臓は激しく鼓動し始めた。

なんてこと、希崎が彼女の方に歩いてきている!

ああ、2年間の追っかけは意味があったんだ!

希崎は彼女を知っていて、覚えていて、大勢の前で彼女の方へ歩いてきている。

まるで夢の中の白馬の王子様が目の前に現れたようだ!