「静かに。」
舞台の上の王子様は眉をひそめ、冷たく一言言った。
瞬間、会場は水を打ったように静かになった。
鈴木月瑠は目を丸くした。
たった4歳の子供なのに、こんなにもオーラがあり、たった二文字で数千人の女性を黙らせることができるなんて。
本当にすごい!
こんなにもファンに愛されるのも納得だ!
彼女は追っかけなどしない人間だったが、この子の顔立ちとオーラに少し魅了されてしまった!
万人の視線を浴びながら、希崎は手のマイクを後ろのアシスタントに投げ、足を踏み出し、階段を降りて、ファンの群れの中へと歩いていった。
彼の後ろのマネージャーはすぐに焦った:「希崎、崎兄さん、降りちゃダメ!」
ファンは好きであればあるほど狂気的になる。希崎が降りていけば、きっとファンに引き裂かれてしまうだろう。
「シーッ!」
希崎は振り返り、マネージャーに向かって静かにするよう手振りをした。
このジェスチャーが出た瞬間、下のファンたちはまた熱狂した。
彼女たちの希崎は、どんな動きをしても可愛くて、心臓が止まりそうになるほどだった。
「おりこうさんに、騒がないで。」
希崎はゆっくりと口を開いた。
彼の声には魔力があるかのようで、邪気を帯びており、熱狂的なファンたちをこうも素直に静かにさせた。
押さえつけられていた鈴木月瑠も、心に清風が流れるような、安心感を覚えた。
希崎が通る場所では、人々は自然と道を開けた。
手の届くところにいるアイドルを見て、叫びたい、抱きしめたいと思いながらも、ファンたちはそれを必死に抑えていた。
希崎は彼女たちにおりこうにするよう言ったのだ。
彼女たちは大人なのだから、子供よりもおりこうでなければならない。
希崎はファンの奥深くへと歩き続け、後ろには心配そうなマネージャーとアシスタント、そして近すぎず遠すぎない距離でボディーガードが守っていた。
幸い、ここまでの道のりで狂気的なファンに遭遇することはなかった。
ドキドキ!
ドキドキ!
維姉さんの心臓は激しく鼓動し始めた。
なんてこと、希崎が彼女の方に歩いてきている!
ああ、2年間の追っかけは意味があったんだ!
希崎は彼女を知っていて、覚えていて、大勢の前で彼女の方へ歩いてきている。
まるで夢の中の白馬の王子様が目の前に現れたようだ!