第765章 七十歳の誕生日

鈴木月瑠はバッグを持って歩いていった。「あなたまだここにいるの？あなたのマネージャーは？どうして側にいないの？」

「パパと一緒にいるから、彼らが付いてくる必要なんてないよ。月瑠、早く、パパみんなで食事に行こうって言ってるよ」

希崎は彼女の腕を引っ張り、会場の外へ連れ出した。

彼女が目を上げると、車に寄りかかって立っている一橋貴明が見えた。

そして彼の隣には一橋晶がいた。

大きい方と小さい方、まるでコピー＆ペーストしたかのように、顔立ちが全く同じだった。

「鈴木おばさん、来たんだね」

一橋晶は彼女を見るなり、口元に笑みを浮かべた。

鈴木月瑠はかがんで小さな子の頭をなでた。「晶、笑うとすごく可愛いわね。これからもっと笑うといいわよ」

「月瑠、僕は？僕は？僕が笑うとかわいい？」

希崎は無理やり二人の間に割り込み、顔を上げて八本の小さな白い歯を見せた。

鈴木月瑠は思わず噴き出した。「あなたは国民の息子だもの、どんな時でも可愛いわよ」

希崎は嬉しそうに首を振った。

彼と一橋晶は一人ずつ鈴木月瑠の両側に立ち、それぞれ彼女の手を掴んで、彼女をしっかりと囲んだ。

一橋貴明の顔は一瞬で曇った。

彼は突然、この二人の子供がとても煩わしく感じた。

そして鈴木月瑠という女性も、彼という大人がここに立っているのに、彼女は気づいていないのか？

彼女が出てきてから今まで、彼女の視線は一秒たりとも彼に向けられず、まるで彼女の世界には二人の子供しかいないかのようだった。

そして彼は、完全な部外者のようだった。

本当に変だ、彼がこんなくだらないことを気にするなんて。

「ゴホン！ゴホン！」

一橋貴明は力強く二回咳をして、ようやく三人の注意を引いた。

希崎は大きな目をパチクリさせながら言った。「パパ、風邪ひいたの？じゃあ一緒に食事するのはやめた方がいいんじゃない？もし月瑠にうつしたらどうするの？」

「……」

鈴木月瑠は思わず血を吐きそうになった。

こんなに実の父親を嫌っていて、家に帰ったら痛い目に遭うのが怖くないのだろうか？

一橋貴明の顔色はさらに暗くなり、冷たく言った。「一橋希崎、チャンスをあげよう、今の言葉をもう一度言ってみなさい」

希崎は恐れて首をすくめ、父親の威厳に挑戦する勇気はなかった。