第772章 顔が太平洋まで飛んでいった

曽良彩子はにこにこと声をかけた。「皆さん、まだお帰りにならないでください。これは私たちの霜が特におばあさまのために用意したビデオサプライズです。皆さん、座ってご覧になってください。」

鈴木奥様がそう言ったのだから、皆は面子を立てないわけにはいかず、足を止めて見ることにした。

平凡なビデオに、人々は眠気を催していた。

しかし、5分後、ビデオの雰囲気が突然変わった。

ホテルの背景、ダブルベッドルーム、乱れたシーツ、そしてベッドの上で絡み合う一組の男女。

そしてスピーカーから流れる卑猥な音……

元々興味を示していなかった人々が一斉に顔を上げ、宴会場の大スクリーンを見つめた。

「なんてこと、これは間違って流されているんじゃないの？どうしてこんな卑猥なビデオが？」

「この音があまりにもアレすぎる。まさか、ホテルのスタッフが暇さえあればこんなものを隠れて見ているのかしら？」

「早く止めてよ、恥ずかしすぎる！」

「ねえねえ、あなたたち、ビデオの中の女性の顔が見覚えがあると思わない？」

「そうね、どこかで見たことがあるような……」

曽良彩子はゆっくりと唇を曲げ、顔に悪意ある笑みを浮かべながらも、口を押さえて驚いたような声を出した。「まあ、あれは月瑠じゃないの？月瑠がどうしてビデオの中でこんなことを……あの男は誰なの、私たちの月瑠とどういう関係なの……」

曽良彩子が流れを作ると、宴会場の人々は全員気づいた。

「そうそう、鈴木家の養女よ、さっきまで宴席にいたのに、急にいなくなったわね？」

「ベッドの背景はエイゴウホテルのマークよ。まさか、これはライブ配信じゃないでしょうね？」

「鈴木家の養女はあまりにも恥知らずね、おばあさまの誕生日パーティーでこんなことをするなんて、鈴木家はどうしてこんな娘を育てたのかしら！」

宴会場の人々はざわめいた。

人々のざわめきでさえ、ビデオから流れる甘い音を遮ることはできなかった。

「鈴木家の養女は一橋社長と関係を持って、一橋家に息子まで産んだんじゃなかったの？それなのに他の男と浮気するなんて？」

「骨の髄まで落ち着きのない女なのよ、一人の男では満足できなくて、次の相手を見つけたんでしょ！」

「まったく、見識が広がったわ。彼女がこんなことをしたら、一橋社長はまだ彼女を受け入れるのかしら？」