第793章 彼女はいつからそんなに自己陶酔的になったのか？

黒田悅は顔を上げ、窓の外を見ると、ちょうど黒い車が止まり、一橋貴明と一橋晶が続けて車に乗り込むのが見えた。

ふん！

若旦那に取り入ったところで何になる。

今、一橋家を仕切っているのは一橋社長だ。

黒田悅は白い紙に「一橋貴明」という三文字を強く書き付け、それを丸めてゴミ箱に冷たく投げ捨てた。

平日のため、ビュッフェレストランは比較的静かだった。

マーケティング部の30数人が到着すると、このお店は一気に賑やかになった。

「さあさあ、まずは乾杯しましょう。鈴木部長の新居祝いです！」

全員が立ち上がり、カクテルで乾杯した後、やっと席に着いて食事を始めた。

みんな若者ばかりで、仕事場を離れると非常に活発になり、笑いが絶えなかった。

「鈴木部長、本当にすごいですね。まだ23歳で、もうマーケティング部の部長になって、入社してたった2ヶ月ちょっとで、こんな大きな実績を上げるなんて。これからは部長が私の目標です！」米子はグラスを上げ、尊敬の眼差しで言った。

周りの人たちも次々と言葉を添えた。「鈴木部長は本当に優秀で、私たち古株社員が恥ずかしくなるほどです。これからもっと頑張らないと。」

「鈴木部長、ぜひ私たちにも教えてください。私たちも運良く会社から家をもらえるようになりたいです。」

宴会の雰囲気は非常に良く、料理の味も素晴らしかったため、みんな楽しく食事をしていた。

突然、ビュッフェの入り口から別のグループが入ってきた。

「わぁ、技術部が宴会に来たわ」米子は頬を両手で包みながら言った。「鈴木部長、技術部の副部長を見てください。超イケメンで、昔は学校一のモテ男だったそうですよ…」

「米子、一橋社長がいるのに、他の人をイケメンだなんて言うの？」

「え、一橋社長が来たの？」

全員の視線が一斉にそちらへ向けられた。

技術部の社員たちに囲まれて入ってくる一人の男性が見えた。

あの冷たく厳しいオーラ、天にも届きそうな長い脚、鋭い眼差し……一橋貴明以外の誰でもなかった。

一橋貴明は黒いスーツを身にまとい、淡々と人々の中を歩いていた。

彼が現れると、レストラン内のすべての光が彼に吸い寄せられ、彼が最も輝く存在となった。誰もが思わず彼に視線を向け、周囲からは驚嘆の声が次々と上がった。

鈴木月瑠でさえ、思わず視線を送ってしまった。