第28章 あの女に心はない

そのとき、また2通のメールが届いた。

一通は東京大学の公式アカウントからで、彼女の参加確認のメールだった。メールの最後には「以前ご指導いただいた高倉彩芽も、今回のファッションデザインコンテストに参加します。彼女にご興味があったのではないでしょうか?」と書かれていた。

高倉海鈴は「あっ」と声を上げ、もう一通のメールを開いた。

藤原財閥デザイン部からのメールで、東京大学のファッションデザインコンテストへの参加を依頼するとともに、協力関係を築きたいという誠意ある申し出があり、山内さんとの面会を希望し、協力について話し合いたいとのことだった。

高倉海鈴は藤原財閥という文字に目を留め、最後にはため息をついた。

翌朝、高倉海鈴が家を出る時、藤原徹はまだ起きていなかった。彼女は食パンを一枚手に取り、新しく来た家政婦に一声かけて出かけた。