第27章 ファッションデザインコンテスト

廊下から足音が聞こえ、高野広と運転手は急いでタバコを消し、姿勢を正した。

「若様」

「藤原社長」

高野広は彼の後ろを見たが、高倉海鈴の姿が見えなかったので、思わず尋ねた。「奥様は？」

藤原徹は冷たい声で言った。「お前に関係ないだろう」

高野広：「……」

気にしないなら、わざわざ遠くからここまで彼女を探しに来るなよ！

高倉海鈴がバッグを持って降りてきた時、彼女のカスタムカーは運転手の田中さんが既に運転して行ってしまっていた。高野広は廊下の端で彼女を待っていた。「奥様、藤原社長が車でお待ちです」

高倉海鈴は不思議そうに「どうしてここに？商談？」

高野広は周りの古びた団地を見回し、マイバッハの後部座席に座る男の影を見て、微笑みながら「はい」と答えた。

秘書として、臨機応変な対応は基本的なスキルだ。

高倉海鈴の一言で、藤原社長が奥様に何も説明していないことがわかった。当事者が言わない以上、彼も余計なことは言わないだろう。

車の後部座席で、藤原徹はノートパソコンで仕事をしていた。高倉海鈴は彼を一瞥したが、邪魔するのは気が引けた。彼女はバッグを膝の上に置き、前で運転している高野広に尋ねた。「私が運転してきた車はどうなりました？」

「田中さんが運転して行きました」

高野広はバックミラーを通して藤原徹の黒い頭頂を見て、高倉海鈴と会話を試みた。「奥様は運転できるんですか？あの車は藤原社長が改造を依頼したもので、普通の人には運転できないんですよ」

「少しだけ」

高倉海鈴はバッグの上で指を動かし、さらに付け加えた。「改造は上手くできていますね」

藤原徹は皮肉っぽく笑った。

高倉海鈴は不思議そうに彼を見た。

高野広は急いで話題を変えた。「奥様はどうして旧市街に？最近の若い人はあまりこっちには来ないんですよ」

「先生に会いに来ました」

「先生？」

高倉海鈴は田舎から来たんじゃなかったのか？もしかして先生が田舎から東京に引っ越してきたのか？

「東京大学の先生？」

藤原徹はパソコンの画面に表示された調査結果を見ながら、突然口を開いた。「そういえば、お前は東京大学の学生だったな」

高倉海鈴：「……」