第44章 逃げられない

藤原徹は医者がなかなか口を開かないのを見て、一歩前に踏み出した。「話せ!高倉海鈴はどうなんだ!」

かかりつけ医は彼に驚かされ、震える手で診断書を差し出した。「若、若奥様の体には何の問題もありません。ただ…ただ酔っ払っているだけです。若奥様はアルコールに弱く、少量のアルコール飲料でも酔ってしまうんです。」

酔っ払った?

藤原徹は瞬きをして、状況を飲み込めなかった。

ちょうどその時、検査に出していた不明な液体の結果も出た。確かにお酒だった。

藤原徹は安堵のため息をつくと同時に、犯人探しを始めた。「なぜ夫人の部屋にお酒があったんだ?」

使用人たちは互いに顔を見合わせ、最後に若い女性が恐る恐る前に出て答えた。「申し訳ございません、旦那様。私たちの作業ミスで、旦那様用のお酒を夫人のお部屋に届けてしまいました。」