第70章 故意に階段から突き落とす

藤原涼介は眉をひそめた。彼は高倉海鈴が学校でこんなに評判が悪いとは知らなかった。そうであれば、今度機会を見つけて海鈴に話してみよう。この学校を辞めた方がいいと。どうせ高倉家は彼女の給料なんて必要としていないのだから。

高倉彩芽はため息をつき、そのクラスメートに言った。「違うわ。私と姉さんは実の姉妹よ。悪影響なんてあるわけないでしょう。そういえば、姉さんに話があるの。昨日のことで謝れてないから。あんなに多くの人が姉さんを非難して、姉さんが落ち込んでいないか心配で...鈴、涼介も一緒に来てくれない?私たち皆で行けば、きっと姉さんを励ますことができると思うの。」

「村上家が来週、山内正デザインのオートクチュール『ながれどし』を展示するって聞いたわ。姉さんを誘いたいの。だって、展示されるのは姉さんがデザインしたドレスでしょう?きっと達成感があると思うの。」

佐藤鈴は鼻で笑った。「彩芽、あなたって本当に優しいのね!山内正だなんて...私は絶対に高倉海鈴が山内正だなんて信じないわ。谷口敦と海鈴の仲が良さそうだし、この二人の間に何かあるんじゃないかしら。」

誰も山内正を見たことがなく、どんな人なのかも分からない。高倉海鈴が自分は山内正だと言うだけで、学校の生徒たちは本当に信じてしまった。もちろん、彼らが高倉海鈴を山内正だと信じているのは、ほとんどが谷口敦の面子を立ててのことだった。結局のところ、谷口敦は学校で並々ならぬ地位を持っているのだから。

藤原涼介も隣で頷いていた。彼は佐藤鈴の言葉に強く同意していた。

...

高倉海鈴が教室棟を出たとき、ちょうど高倉彩芽が藤原涼介の腕を取って彼女の方へ歩いてくるところだった。海鈴は眉をひそめた。この二人はなぜいつも彼女の前に現れるのか、おかしいんじゃないのか?

「姉さん、私たちの間に誤解があるみたい。少し話し合えないかしら?」

高倉海鈴は無視して立ち去ろうとした時、瞳孔が急に縮んだ。3階から2階への階段には、雑物が山積みにされており、その一番上にフルーツナイフが置かれていた。刃が長く、誰かの悪戯か、わざと刃を上向きに置いてあった。もし誰かが不注意で階段から転げ落ちたら、そのナイフが体を貫くことになる!