第86章 もう怒りは収まったかな?

ホテル全体が村上家によって貸し切られていたため、ここに停まっている車は必ずパーティーの参加者のものだった。

人々は玄関の外の車を目を見開いて見つめていた:

「あの方が本当に来られたの?」

「すげぇ、東京でも村上家くらいしかこんな面子はないだろうな」

高倉海鈴はその話を聞いて秋山明弘が到着したのかと思い、お兄さんを呼ぼうとして、遅すぎると文句を言おうとしたが、振り向いた瞬間、冷たい眼差しと出会った。

藤原徹、まさか藤原徹が先に到着するなんて!

このクソ男はまた説教しに来たのか?彼女を監禁するつもり?村上真由美と同じように、警備員に追い出させようとしているのか?

高倉海鈴は考えれば考えるほど悔しくなった。この仕打ちに我慢できず、村上真由美と田中誠の見物する目の前で、近づいてきた警備員を押しのけ、大股で外へ向かった。警備員に追い出される前に、自分から出て行く!

冷たく鼻を鳴らし、怒りながら外へ向かおうとしたが、藤原徹の傍を通り過ぎようとした時、彼に腕を掴まれた。

「随分と長いこと怒っていたな。もう収まったか?」

周囲が一瞬静まり返った。

高倉海鈴は2秒ほど呆然とした。藤原徹は何をしているの?もう監禁する気はないの?

藤原徹は一瞬躊躇してから、目を伏せて言った:「まだ私と話したくないのか?そんなに怒ることか?まずは中に入ろう。後で好きなだけ怒ればいい、どうだ?」

高倉海鈴は驚いた。この男は本当に自分に話しかけているの?しかも中に入れと?普通なら村上真由美の味方をして、指を指して早く出て行けと言うはずじゃないの?なのに今は優しく機嫌を取ろうとしている?

高倉海鈴は軽く鼻を鳴らした。二言三言優しい言葉を掛けただけで、このクソ男を許すと思っているの?

藤原徹は高倉海鈴が怒った様子を見て何か言おうとしたが、高倉海鈴が甘えた声で先に言った:「あなたと一緒に入るなんていやよ。村上さんと彼女の友達が私を歓迎しないって言ったわ。招待状がないから入れないって言って、警備員に追い出そうとしたのよ」

藤原徹は冷ややかに目を上げた:「入れないと?」

村上真由美は息を呑み、急いで説明しようとした:「徹お兄様、私は...私は...」