第85章 村上家の会場を汚すな

高倉海鈴は鼻歌を歌いながら、村上家のパーティーが開かれる陽明グランドホテルにやってきたが、中に入ることはできなかった。入りたくないわけではなく、入れなかったのだ。

招待状を持っていなかったため、秋山明弘に電話で連絡を取った後、大人しく入り口で待っていた。

秋山明弘は恐らく渋滞に巻き込まれたのか、なかなか到着しない。高倉海鈴は眉をひそめた。兄さんが早く来ないと、藤原徹というあの犬畜生が来てしまう。彼女を見つけたら、また無理やり連れ戻そうとするに違いない。彼女は藤原徹と戦うことは恐れていなかったが、今日の目的は村上家を懲らしめることだ……だから藤原徹との衝突は避けた方がいい。

そのとき、少し離れたところで客人を出迎えていた村上真由美が急に目を細め、傍らのセレブたちに小声で愚痴った。「どうして彼女も来たの?」

今日来ている人の多くは村上家に取り入ろうとする人たちで、村上真由美の言葉を聞いて、すぐに誰かが応じた。「村上さん、誰のことですか?」

村上真由美は高倉海鈴の方向に顎をしゃくった。「あの女よ。うちは招待状を渡してないはずなのに、なぜか来ているわ。きっとこっそり忍び込もうとしているんでしょうね。」

「誰がそんな厚かましいことを。招待状もないのに来るなんて?」白いワンピースを着た女性が言葉を継いだ。「村上さん、気にしないでください。今すぐ警備員に追い払わせます。」

「ああ。」村上真由美はわざとため息をついた。「いいわ……彼女には関わらない方がいいわ。あなたたちは知らないでしょうけど、この女はとても計算高くて手口が巧妙なの。どういうわけか徹の目に留まってしまって、私まで彼女に気を遣わなきゃいけないの……」

田中誠は目をきらきらさせながら驚いて言った。「真由美、その女が藤原徹様を誘惑したってこと?じゃあ、他人の恋愛関係に割り込む第三者じゃない?」

村上真由美は唇を噛んだ。「私も彼女がなぜ来たのかわからないわ。たぶん徹が連れてきたんでしょう……まあいいわ、見なかったことにしましょう。」

田中誠は元々家族の命令で村上真由美に取り入るために来ていたので、この話を聞いて黙っているわけにはいかなかった。もしこの女を追い払うことで村上真由美を助けることができれば、きっと恩を覚えてもらえるはずだ!