第149章 正義を求める

彼女は幼い頃から異なる環境で育ち、愛とは何かを知らなかった。高倉彩芽が藤原涼介を手に入れるために事実を歪めることも厭わず、村上真由美が彼女を追い落とすためにパーティーを台無しにしてまで陥れようとし、青山怜菜が藤原徹を手に入れるために自分の体を傷つけることも厭わない様子を見て、彼女は戸惑っていた。

もし愛が自分を傷つける代償として得られるものならば、永遠に愛など要らないと思った。しかし藤原徹は違うと彼女に告げた。本当に誰かを愛するということは、自分自身を大切にすることだと。

藤原徹は周りの環境が見えず、ただ高倉海鈴の体温だけを感じることができた。「だから、これからは必ず自分を大切にして、傷つかないようにしてね。」

高倉海鈴は無意識に答えた。「私を傷つけられる人なんていないわ。私、すごく強いから。」

暗室は一瞬静かになり、藤原徹は軽く笑って、海鈴の腰に置いていた大きな手をさらに強く回した。「そうだね。君が一番強い。」

藤原徹はそう言うと、彼女の腰に置いていた手を滑らせて手を握った。「もう遅いから、外に連れて行くよ。」

高倉海鈴は青山怜菜の方も毒が発症する頃だろうと思い、頷いて藤原徹について出て行った。暗室の外では大勢の人々が緊張して一言も発することができなかった。藤原徹が直々に迎えに来たのだから、彼らには止める勇気などなかった。

藤原夫人は高倉海鈴を一日中閉じ込めておくように言ったが、藤原徹こそが藤原家の当主であり、彼らの本当の主人だった。藤原徹と藤原夫人の間では、当然藤原徹の言葉に従わなければならなかった。

藤原徹は彼女を見下ろして言った。「一緒に青山怜菜のところに行く?それとも先に休んでいる?私一人で行こうか?」

高倉海鈴は彼を見上げた。

「君のために正義を取り戻しに行く。」

高野広は大量の書類を抱えて傍らに立ち、藤原徹の言葉を聞いて即座に口を開いた。「社長、ご要望の証拠は全て揃えました。」

藤原徹は冷笑した。「じゃあ、行こうか。」

……