第202章 田中さんが来た

「徹、そんなに金川草を持っているなら、村上おじいさまに一株あげても構わないでしょう。人命が大事なのよ!」

藤原の祖父の言葉が終わるや否や、皆が貪欲な表情を浮かべた。

それは金川草なのだ!藤原徹が百株以上も持っているとは!一人一株ずつでも十分なはずだ。

彼らは藤原徹を食い入るように見つめ、藤原の祖父は眉をひそめて言った。「徹、村上おじいさまは私を救ってくれた恩人だ。たとえ心中不満があっても、一株の金川草をあげるべきだ。それに、私も最近体調が悪いから、孝行の意味でも少し分けてくれ」

高倉海鈴は心の中で冷笑した。この藤原の祖父は随分と厚かましい。

藤原徹に金川草を渡させるため、大勢で圧力をかけているのだ。

藤原の祖父と藤原夫人は貪欲な目で藤原徹を見つめていた——

彼は冷たく皆を見渡し、淡々と口を開いた。「持っていません」

その場の空気は一気に凍りついた。

藤原の祖父は目を怒らせ、突然立ち上がった。「藤原徹、どういうつもりだ?外では百株以上の金川草を持っているという噂が広まっている。持っていないのなら、なぜそんな噂が出回るのだ?あの女に惑わされているに違いない!私の言うことも聞かなくなって……」

藤原夫人は怒りに満ちた顔で言った。「高倉海鈴……全て高倉海鈴のせいよ……たかが数本の草花のことで執着して、人を!彼女を追い出しなさい!もう二度と会いたくないわ!」

藤原徹は冷たい表情で、高倉海鈴の手を引いて立ち去ろうとしたが、高倉海鈴は彼を制した。

彼女は微笑んだ。今は帰れない、面白い場面がこれから始まるのだから。

そのとき、使用人が慌てて駆け込んできた。「ご主人様、奥様、神の手を持つ名医の田中さんがお見えです」

神の手を持つ名医?

田中さんは神の手を持つ名医の助手だが、なぜ藤原の本家に?

皆が信じられない表情を浮かべ、目をこすりながら、田中おじいさんがゆっくりと歩いてくるのをはっきりと見た。

確かに田中さんだ!

この数年間、神の手を持つ名医は各地を旅し、常に田中さんが付き添っていた。そして何年も前に神の手を持つ名医が陸田の祖父を救ったとき、皆が会ったことがある。

田中さんは年を取っているものの、顔色は良く、健康そうに見えた。