高倉海鈴は悲しげに目を伏せ、「村上の祖父が重病だと聞きました。でも、私には金川草を一本も差し上げることができません。彼を救うこともできません。金川草を守れなかったことには責任がありますが、実際に金川草を台無しにしたのは村上さんです」
高野司「……」
奥様のこの言葉で、皆は社長が恩を忘れて金川草を渡さないのではなく、村上の祖父の愛する孫娘が薬草を台無しにしたのだと理解した。
村上真由美は青ざめた顔で、「違います!私はそれが金川草だとは知りませんでした。きっと彼女が私を陥れようとしているんです。私が踏みつけたのは雑草だけで、彼女は私が金川草を殺したと冤罪をかけているんです!」
高倉海鈴は弱々しく装って、「村上さん、金川草は田中さんが裏庭で育てていたもので、私は彼の代わりに世話をしていただけです。あなたは田中さんが嘘をついていると言うんですか?認めなくても構いません。監視カメラの映像がありますから、田中さんにあなたが踏みつけたのが金川草かどうか確認してもらいましょう」
村上真由美は蒼白い唇を噛みしめ、頭の中が真っ白になり、全身から力が抜けた。
周りの人々は村上真由美を見つめながら、こう囁きあった。「村上の祖父が何年も探し求めていた金川草を、自分の愛する孫娘が全て台無しにしてしまうなんて、笑い話です」
「村上さんが金川草を知らないはずがありません。彼女も探し求めていたと聞きましたから、知らないはずがない」
「もし彼女が知っていたなら、なぜわざと金川草を踏みつけたのでしょう?村上の祖父は孫娘をとても可愛がっていたそうですが、まさかこの孫娘がこんなに非情で、村上の祖父を殺そうとするなんて?」
高倉海鈴は涙を拭いながら、「藤原徹、村上さんが村上の祖父を救う金川草を台無しにして、私が薬草を渡したくないと冤罪をかけたんです。彼女は目的を達成するためなら、親族の命も顧みないなんて、怖すぎます……」
高野司「……」
今になって、なぜ高野広が奥様は凄いと言っていたのか、そして弱々しく装って、猫をかぶっているのかがよく分かった。
この演技力なら女優にならないのは勿体ない。
きっと社長も奥様が演技をしていることを知っているはず……