第214章 遠山初美デザイナー

八尾夢子はドレスを作る時にそこまで考えていなかった。ただ高倉海鈴を人前で恥をかかせたいだけだったが、高倉海鈴はドレスの問題をすぐに見抜いてしまった。

今や事態が露見し、絶対に認めるわけにはいかない!そうでなければ自分のアトリエに影響が出てしまう。

「徹……私は知らなかったの。上質な生地を使ったはずなのに、なぜ裏地が粗布になっているのか分からないわ。私は……」

高倉海鈴は意味深な笑みを浮かべた。「八尾さんは有名なデザイナーで、海外でも名が通っていると聞きましたが、シルクと粗布の区別もつかないのですか?そんなレベルでデザイナーになれるなんて、笑い話ですね!」

藤原明は言葉に詰まり、八尾夢子を弁護する術を知らなかった。

藤原徹は咳払いをして「全部捨てろ」と言った。

執事はすぐに人を呼んでドレスを運び出させた。

八尾夢子は目に涙を溜めながら「徹、私はここ数日徹夜でドレスをデザインしていたの。一部を他の人に任せたら、きっと彼らが材料費を節約しようとして、私に黙って生地を替えたのよ。私じゃないわ……」

藤原徹は相変わらず冷たい表情を崩さず、八尾夢子は焦って足踏みをした。「徹、私たち子供の頃からの付き合いでしょう?私がどんな人間か分かるはずよ。人を傷つけるようなことするわけないじゃない?」

「八尾さん、もし私が本当にこのドレスを着ていたら、どうなっていたか考えたことはありますか?」

高倉海鈴は冷たく言った。

これは単なる生地の取り替えの問題ではなく、デザイン段階から悪意があったのだ。

そして八尾夢子が自らドレスを届けに来たのは、自分が親切で優しい人間だと皆に知らしめ、こんなことをするはずがないと思わせるためだった。

藤原明は高倉海鈴を見上げ、やはり八尾夢子を助けなければと思い、大声で叫んだ。「海鈴、何を言ってるんだ。ただのドレスじゃないか?これは夢子姐の責任じゃない!」

八尾夢子は涙目で、むせび泣きながら言った。「徹、私は本当に早くドレスを完成させたくて、だから他の人に手伝ってもらったの。こんなことになるなんて思わなかった。」

その時、外から車のエンジン音が聞こえてきた。

執事が慌てて入ってきて「奥様、外にお客様がいらっしゃいます」と告げた。