第211章 また一人の腹黒女が来た

このドレスは一見問題なさそうに見えましたが、彼女は山内正。このドレスの細工の意図を一目で見抜いてしまいました。

八尾夢子は表面上は親切そうでしたが、実際は敵意に満ちていました。

オートクチュールのドレスは素材選びが重要で、見た目の良さだけでなく着心地も大切です。でもこれらの服の生地は見た目だけで実用性がなく、着ると確実に不快になるはずです。

そのうちの一着はスカート部分が重く、ウエストは薄い粗悪な生地一枚だけで、不注意でウエストが裂けてしまう可能性があります。もう一着は逆に、ウエストに何重もの生地を縫い付けているのに、スカート部分は薄いシフォンのようで、バランスが悪く、20キロ太って見えてしまいます。

同じ服飾デザイナーとして、高倉海鈴も八尾夢子のことは知っていました。彼女は数々の賞を受賞しており、こんなデザインレベルのはずがありません。

つまり八尾夢子は、パーティーで彼女を恥をかかせ、できれば藤原徹に嫌われるようにしたかったのです。

高倉海鈴が黙っているのを見て、八尾夢子は落胆した表情を浮かべました。

無理に笑顔を作って、「海鈴、この服気に入らない?」

他の人から見れば、八尾夢子がこんなに短期間で16着もの一点物のドレスをデザインしたことは、すでに素晴らしい achievement だと思うでしょう。

さらに自ら完成品を渡道ホールまで持ってきたのですから、誠意は十分でしょう。

もし高倉海鈴が気に入らないと言えば、恩知らずだと思われるでしょう。

八尾夢子は気まずそうに笑いながら、「気に入らなくても大丈夫よ。直すことも、作り直すことも可能だわ。何か意見があれば、私に教えてくれる?」

心の中では冷笑していました。田舎者にデザインが分かるはずがない、と。

高倉海鈴は何も言いませんでした。

八尾夢子はため息をつきました。「海鈴が私のデザインした服を気に入らないようね。じゃあ、もう何着か新しくデザインしましょうか…」

そのとき、彼女のアシスタントが不満げに口を開きました。「夢子姐、毎日徹夜して16着のドレスをデザインしたのに、また新しくデザインするなんて、体がもちませんよ。藤原奥様でもそこまで人を酷使するのはどうかと…」