第256章 夫主令の出現

高倉海鈴が心の中で呟いているとき、藤原徹が突然咳をした。

高橋川広は分かっていた。藤原徹は何かを聞いたに違いない。そして海鈴はこの秘密を知らず、今頃心の中で何を言っているのだろうか。

彼は目を上げて藤原徹を見ると、藤原徹も自分を見ていた。そして二人は同時に顔を背けた。

高倉海鈴が突然口を開いた。「師叔父様、さっき私に何か言いたいことがあったみたいですけど、どんなことか分かりません」

高橋川広は少し躊躇した。彼は海鈴に血で人を救うことには副作用があり、相手が彼女の心の声を聞けるようになることを伝えたかった。

しかし今は……

高橋川広は眉をひそめた。

どうやら藤原徹はこの状況を楽しんでいるようだ。もし彼がこのことを話せば、夫婦の楽しみを台無しにしてしまうのではないか?

そこで彼は咳払いをして言った。「忘れてしまった」

高倉海鈴はため息をついた。「はぁ、年を取ると記憶力も悪くなりますよね」

高橋川広:「……」

この小生意気な!

高橋川広は去り際に、小声で注意した。「海鈴、ここは山の上じゃないんだ。外では少し慎みを持って、その……」

心の中で呟くのを控えめにして、表と裏で二つの顔を持つ必要はないし、弱々しく装う必要もない。

しかし言い終わらないうちに、高倉海鈴は困惑した表情で言った。「何を控えめにするんですか?藤原徹は私にとても優しいですよ!」

高橋川広:「……」私の言いたいことが分かっていないな!

彼は意味深な目で藤原徹を見て、何か言おうとしたが、高倉海鈴の首に掛かっている一見普通の玉札を見て、突然体が震えた。

これは……

高橋川広は驚愕の表情で顔を上げた。「藤原社長?これを彼女に?」

藤原徹は冷静な表情で、「私からの些細な贈り物だ」

高倉海鈴は頷いた。「そうですよ、師叔父様、何か変なことでも?」

ただの玉札だけど、藤原徹が贈った他の贈り物に比べれば、これは安価なものだった。でも、この玉札の中は空洞になっていて、銀針を数本入れることができ、必要な時には暗器として使える。

高橋川広:「!!」この玉札は藤原家の夫主令ではないか!海鈴は知らないのか?