第302章 狂乱な値上げ

藤原徹は平然とした態度を保っていた。彼は山田莉央を深く憎んでいたが、この時ばかりは彼女の存在に感謝していた。なぜなら、彼女が藤原明を産んでくれたからだ。

藤原徹は尋ねた。「バイオリンはいらないのか?」

高倉海鈴は無関心な表情で答えた。「確かにオークションには参加するけど、私はお金を払わないわ。それに、最終的にこのバイオリンは私のものになるはずよ」

藤原徹は不思議そうな表情を浮かべた。高倉海鈴が支払わないと言うなら、山下涼介も支払わないだろう。となると、支払うのは八尾夢子しかいない。

八尾夢子が支払って、最終的に品物は高倉海鈴のものになる?

藤原徹には確信があった。八尾夢子がそんなに善意を持っているはずがない。その裏にある策略は既に見透かしていた。

一億円から始まったバイオリンのオークションに、参加者たちは興味を示さなかったが、それでも順調に二億円まで上がっていった。