第303章 30億円の天価

傍にいた藤原明はもう座っていられなかった。

さっき高倉海鈴は興味がないと言ったのに、今は二億円まで値を上げている。

八尾夢子は唇の端を上げた。彼女は高倉海鈴が完全に取り憑かれていると確信していた。彼女の目には、お金は単なる数字に過ぎず、どんな代価を払ってもこのバイオリンを手に入れようとしているのだ!

それならば、最後にもう一度値を上げて、高倉海鈴を窮地に追い込んでから、手を引こう。

そうすれば、高倉海鈴が辞退すれば、チャリティー活動を軽視していると見なされ、上流社会全体から嘲笑され、東京で顔向けできなくなるだろう。

高倉海鈴が賢明なら、この後は歯を食いしばって、大金を出すしかないはずだ。

落札が近づいてきた時、八尾夢子はパドルを上げた:「三億円!」

その瞬間、全員が息を呑み、視線は高倉海鈴と八尾夢子の間を行き来した。