高倉海鈴はダイヤモンドクラウンを手に取り、胸に抱きしめながら、涙声で言った。「ありがとう」
二十歳になって、十歳の誕生日プレゼントを受け取れるとは思ってもみなかった。
藤原徹が寄付式に参加している間、高倉海鈴はダイヤモンドクラウンを抱えたまま、その場に立ち尽くしていた。
「高倉さん」
その時、穏やかな男性の声が聞こえてきた。
陸田進は薄いグレーのスーツを着て近づいてきた。優しい笑みを浮かべながら、手に持っていた箱を彼女に差し出した。「高倉さん、これを差し上げます」
高倉海鈴は眉をひそめた。
また贈り物?
彼女には理解できなかった。陸田進は彼女と藤原徹が夫婦だと知っているのに、なぜこうして近づいてくるのか?
「陸田さん、結構です」
陸田進は怒る様子もなく、相変わらず穏やかな表情を保ったまま言った。「海鈴さん、私の立場はご存知でしょう」
高倉海鈴の心臓が締め付けられた。
陸田進は微笑んだ。「お兄様から、私が誰なのか聞いているはずです」
高倉海鈴は言葉に詰まった。確かに三兄から婚約者がいると聞かされていた。そしてその人物こそが陸田進だった。
陸田進は深い笑みを浮かべた。「高倉さん、正直に申し上げますと、私はあなたのことが好きです。決して害を与えるつもりはありませんから、そこまで警戒する必要はないと思います」
高倉海鈴は警戒心を露わにした。「どんな目的があるにせよ、私たちの間に接点があってはいけません!」
陸田進は一瞬黙り込み、目に失望の色を浮かべながらも、なおも箱を差し出した。声には懇願の響きが混じっていた。「開けて見てください」
高倉海鈴が動く気配を見せないと、陸田進は箱を開けた。中には静かにダイヤモンドクラウンが置かれており、金箔と寶石で飾られ、照明に照らされて輝いていた。
高倉海鈴はデザイナーだけに、このクラウンの価値をよく理解していた。これは有名デザイナーのライト氏の作品で、たった一つしか制作されておらず、数年前のオークションで落札された後、姿を消していた。その価値は計り知れないものだった。
陸田進は苦笑いを浮かべた。「このクラウンは十年間持ち主を見つけられずにいました。少し古くなってしまって、お気に召さないかもしれません。でも、高倉さんに受け取っていただきたい。もしお嫌でしたら捨ててください」