第317章 藤原徹は彼女の師兄ではない

高倉海鈴はダイヤモンドクラウンを手に取り、胸に抱きしめながら、涙声で言った。「ありがとう」

二十歳になって、十歳の誕生日プレゼントを受け取れるとは思ってもみなかった。

藤原徹が寄付式に参加している間、高倉海鈴はダイヤモンドクラウンを抱えたまま、その場に立ち尽くしていた。

「高倉さん」

その時、穏やかな男性の声が聞こえてきた。

陸田進は薄いグレーのスーツを着て近づいてきた。優しい笑みを浮かべながら、手に持っていた箱を彼女に差し出した。「高倉さん、これを差し上げます」

高倉海鈴は眉をひそめた。

また贈り物?

彼女には理解できなかった。陸田進は彼女と藤原徹が夫婦だと知っているのに、なぜこうして近づいてくるのか?

「陸田さん、結構です」

陸田進は怒る様子もなく、相変わらず穏やかな表情を保ったまま言った。「海鈴さん、私の立場はご存知でしょう」