第351章 罠を仕掛ける

「どうせあなたの評判は台無しになったのだから、誤解されても構わないでしょう。でも彩芽は私たち高倉家の福の星なの。彼女の評判は傷つけられないわ。あなたが涼介を彩芽に譲れば、何もなかったことにして、すべてが解決するわ」

だから今、高倉海鈴は久保朱里にも、人の罪を被る味を味わわせているのだ。

「久保さん、今やあなたの評判は台無しになってしまいました。高倉家と自分の娘のために自分を犠牲にすることを誇りに思うべきではないですか？それとも、自分の娘が投獄され、高倉家の会社が破産の危機に瀕するのを見ても、自分を犠牲にしたくないのですか？」

久保朱里は顔面蒼白で、震えながら、恐怖に満ちた目で言った：「国生、私はあなたの妻よ。私は高倉家を代表しているの。もし私がこの罪を被ったら、高倉家は…」

その時、クロシオの声がゆっくりと響いた：「高倉社長、彩芽のために長女を見捨てる覚悟があるなら、久保朱里はただのあなたの愛人で、決して高倉の奥様とは言えません。自分の娘を救いたくないのですか？」

高倉国生は目を見開き、はっとして気づいた。「そうだ、久保朱里は私と結婚していない。高倉の奥様でもないし、高倉家を代表することもできない。クロシオさんの言う通りだ！久保朱里、この件は君が責任を取るしかない」

「彩芽はあなたの実の娘よ。彼女の名誉が地に落ちるのを見過ごすつもりなの？」

クロシオは当時の久保朱里の口調を真似て、「そうよ、彩芽はあなたの実の娘でしょう。母親として彼女を助けたくないの？彼女の代わりに罪を被らないなんて、あまりにも冷たすぎるわ！」

久保朱里は瞳孔が急に縮み、恐怖に満ちて：「いや！いや…」

許せない、なぜ私が罪を被らなければならないの？

高倉海鈴は、高倉国生がこれらの言葉を聞き入れさえすれば、久保朱里の意思など関係なく、逃げられないことを知っていた。

当時、彼らが彩芽の代わりに罪を被らせようとした時は、もっともらしい理由を並べ立てていたのに、自分の番になると、こんなに大げさな反応をするなんて。

高倉海鈴は電話を切り、気分は上々だった。

その時、藤原徹は書類に目を通していた。高倉海鈴は興味深そうに覗き込んで、「何を見てるの？」

藤原徹は淡々と答えた：「入札書だよ。見たい？」