第364章 音楽は芸術、一般人には分からない

「準決勝の時、みんなが高倉さんより良い演奏をしたということはないでしょう?でも藤原社長は当時の高倉さんは今より上手だったと言っていましたし、藤原社長が証明できるはずです。誰が彼女より素晴らしい演奏ができるというのでしょうか?」

「では、あの時の人たちはどうやって決勝に進んだのですか?八尾夢子さんはどうやってチャンピオンになったのですか?佐藤さん、説明していただけますか?」

会場は水を打ったように静まり返った。

皆、その裏側を理解していて、嫌悪感を露わにして佐藤敏隆を見つめた。

高倉海鈴は意味深な笑みを浮かべた。「みなさんにご指摘いただいて、当時のことで気になることを思い出しました。おっしゃる通り、今の八尾さんが既に実力が落ちた私にも及ばないのは、彼女がより大きく後退したからなのか、それとも当時の決勝に不正があったからなのでしょうか」

八尾夢子は冷や汗を流し、目に恐怖の色を浮かべた。

佐藤敏隆は眉をひそめ、咳払いをして「当時のコンクールは当然、公平で透明性のあるものでした。しかしバイオリンコンクールの審査員は私一人ではなく、私一人でコンクールの方向性を決定することはできません。また、私たちは選手を多角的に評価しており、当時の八尾さんは確かに優秀で、ステージマナーも演奏も非常に成熟していました。おそらく当時の審査員全員が彼女を気に入っていたのでしょう」

佐藤敏隆は正々堂々と語り、まるで長老のように皆を諭すように話した。

「音楽という芸術は、ベテランの音楽家だけがその真髄を聴き分けられるものです。一般の方々は単に楽しむだけで、評価を下すには及びません」

この発言は、高倉海鈴の演奏は表面的には良く聞こえるだけで、実際には内容がなく、素人を感動させることはできても、プロの賞賛を得ることはできないという意味だった。

高倉海鈴は無邪気な様子で「藤原徹、佐藤さんはあなたを素人だと言っていますよ!あなたが私の演奏が良いと言っても意味がないそうです!」

皆は戦々恐々とし、佐藤敏隆も緊張して冷や汗を流した。

しかし彼は音楽界の名士であり、藤原社長は実業家で、金の匂いしかしない。彼の評価は専門家の意見を代表するものではない。