第366章 暗部の真相

このことが広まったら、佐藤敏隆の面子が丸つぶれになってしまうだろう？

八尾夢子は力が抜け、そのまま八尾の奥様の胸に倒れ込んだ。

八尾の奥様は眉をひそめ、「あなた、どなたであろうと、うちの夢子をこのように侮辱し、国際バイオリンコンクールの公平性まで疑うなんて。すぐに娘に謝罪してください！さもなければ、八尾家は即刻あなたを名誉毀損で訴えます！」

その時、木村の祖母が突然立ち上がり、目をこすりながら、信じられないような様子で尋ねた。「あなたは...モーティスさんですか？」

男性は微笑んで答えた。「はい、陸田おばあさま。事前に身分を明かさなかったことをお詫びいたします。それでも私のことを覚えていてくださったのですね」

傍らに座っていた藤原徹は、口元をわずかに歪めた。

八尾の奥様はモーティスという名前を全く知らず、すぐに大声で叫んだ。「あなたが誰だろうと関係ありません！私の娘を中傷したのですから、その代償を払っていただきます！」

その言葉が終わるか終わらないかのうちに、傍らの木村香織も目を見開いて言った。「モーティスさん、なぜ東京にいらっしゃったんですか？次のバイオリンコンクールの準備でアメリカにいらっしゃるはずでは？」

木村香織のこの言葉で、皆は一斉に悟った。

「このモーティスさんというのは、国際バイオリンコンクールの創設者ではないですか？」

「その通りです！彼こそがその人です！十五年前、モーティスさんがバイオリンコンクールを創設されました。モーティスさんのバイオリンの腕前は世界一ではないかもしれませんが、多くのバイオリンの天才を発掘し、バイオリン界の発展に貢献されました」

「そうですね！モーティスさんは慧眼の持ち主で、各選手の長所と短所を的確に見抜くことができる、まさに真の芸術の巨匠です！」

「覚えていますか？先ほどモーティスさんは、佐藤敏隆が意図的に高倉海鈴を狙い、八尾夢子はチャンピオンの資格がないと言い、高倉海鈴の実力はバイオリンコンクールの審査員になれるレベルだと言いましたよね。ということは...」

後の言葉は言うまでもなく、皆の心の中で明らかだった。そして一斉に八尾夢子を見つめた。

八尾の奥様は言葉に詰まり、恐怖に満ちた表情で八尾夢子を見つめた。