第370章 少女の謝罪

高倉海鈴は目を上げて「こんにちは」と言った。

木村香織は恥ずかしそうな表情で、耳まで真っ赤になり、少し近づいて、落ち着かない様子で「あの、ちょっとお話があるんですけど」と切り出した。

木村香織と一緒に来た数人の女の子たちが彼女を軽く押し、耳元で何かを囁いた。高倉海鈴は彼女たちの意図を理解した。

藤原徹は状況を察し、反対側へ移動した。

木村香織は周りに二人しかいないことを確認すると、もじもじしながら「高倉さん、ごめんなさい」と言った。

高倉海鈴は目の前の女の子がかわいらしいと感じ、微笑んで「謝ることなんてないわ」と答えた。

木村香織は急に緊張した様子で「あの時は私が悪かったんです。私のせいであなたが田舎に追いやられて...許してくれなくても構いませんが、それでも謝らせてください」

「あなたがいなくても、久保朱里は他の理由を見つけて私を追い出したでしょう。あなたのせいじゃないわ」と高倉海鈴は言った。

木村香織は焦って「でも、あの出来事がなければ、あなたは人前で恥をかくことも、高倉家も...」

「実は私にとっては災い転じて福となったのよ。高倉家に残っていたら、今頃生きていなかったかもしれない。高倉家を出たからこそ、新しい人生を見つけることができた」

高倉海鈴は穏やかに続けた「おじいちゃんや兄たちと出会えて、高倉家にいた時の何百倍も自由で幸せ。あの時出なければ、きっと出会えなかったわ」

「むしろ、あなたに感謝しないといけないくらいよ」

木村香織は目を丸くして「本当ですか?」

木村香織から電話がなければ、高倉海鈴はこの件を忘れていただろう。ある女の子の誕生日でダイヤモンドクラウンをもらったことだけは覚えていたが、先輩も同じものを贈ってくれたので、それで満足していた。

木村香織は高倉海鈴をじっと見つめ、彼女の表情に怨みの色が全くないどころか、笑顔に満ちているのを見て驚いた「高倉さん、私があなたを突き飛ばして、手から血が出たのに、本当に許してくれるんですか?私も突き飛ばされると思っていたのに」

高倉海鈴の心に不思議な感情が湧き上がった。

高倉家を出てから、兄や姉たちに可愛がられ、皆に甘やかされ、何を好きになっても、何が欲しくても、できる限り叶えてもらえた。喧嘩することさえなかった。