第431章 社長は藤原明のことが好きだったのね！

周囲の羨望の眼差しの中、高倉海鈴がゆっくりと前に数歩進んだ——

しかし秘書は横を向いて尋ねた。「藤原明さんはいらっしゃいますか？」

一同：「？」

藤原明は目を上げ、困惑した表情を浮かべた。

秘書は彼の前まで歩み寄り、軽く微笑んだ。「藤原さん、先ほどオフィスに腕時計を置き忘れられたので、社長が私にお届けするようにと。それと、社長はあなたがラテがお好きだとおっしゃっていたので、一杯買ってまいりました。砂糖を多めにと特に指示されましたが、お口に合いますでしょうか？もしお気に召さなければ、新しいものをお買いしてまいります」

「社長は、コーヒーは控えめにした方がいいとおっしゃっていました。夜眠れなくなって休息に影響が出るそうで」

藤原明は口を尖らせ、不満げな様子で、一杯のラテで自分を買収して藤原家の事業を継がせようというのか？

しかし周りの人々は事情が分からず、徐々に恐ろしい表情を浮かべた。「……」まさか！

ZR社長は高倉海鈴が好きなんじゃなかったの？なぜ藤原明の腕時計が社長室に？なぜ社長は藤原明が砂糖入りラテが好きだと知っているの？わざわざ秘書に買わせたりして？

木村香織は目を見開き、藤原明を見て、また高倉海鈴を見て、そして興奮して飛び上がり、顔を真っ赤にして信じられない様子で叫んだ。「もしかして……ZR社長が好きなのは高倉海鈴じゃなくて、藤原明なの？」

この言葉に、皆が息を呑んだ。

「高倉海鈴は単なる囮で、実はZR社長が好きなのは藤原明で、人目を欺くために高倉海鈴を招待すると言って、藤原明を助手として一緒に行かせたんだ！」

「そうよ、ZR社長はずっと女性に興味を示さなかったけど、それは彼が……男性が好きだったからなのね！」

すぐに、ZR社長が藤原明を好きだという噂が会場中に広がった。

その場に立ち尽くす藤原次男坊：「？」

藤原明の顔色が一瞬で真っ青になった。くそ、みんな俺に恨みでもあるのか？

……

とはいえ、これは競技会なので、噂話は娯楽に過ぎず、皆すぐに競技に集中した。

デザイナーたちの創作を妨げないように、正式な競技中はデザインホールの扉を閉め、人の出入りによる邪魔を避けることにしていた。

5日以内に、デザイナーたちは一式の作品を完成させなければならず、この時間はかなりタイトで、助手たちも忙しく立ち回り、とても焦っていた。