「久保さん、一家だなんて、あなたが決めることじゃありませんよ。先ほど久保の奥様は、私の妻は久保家のお嬢様にふさわしくないとおっしゃいましたよね」と高野司が遮った。
藤原徹は久保統に一瞥もくれず、高倉海鈴の手を取って席に着いた。宴会場の中央には久保家の方々が気まずそうに立ち尽くしていた。
久保統は恐怖に満ちた表情を浮かべた。ようやく高倉海鈴が久保家を見下していた理由が分かった。彼女の後ろ盾が藤原徹だったからだ。ただ、なぜ藤原徹が高倉海鈴と結婚したのかが理解できなかった。
久保統は困惑した様子で高倉海鈴を観察し、その後、傍らで泣いている久保真美を見て、ため息をついた。
もちろん真美のことが心配だった。この娘はいつも高慢で、やっと好きな男性ができたと思ったら、その男性が自分の妹婿だったなんて。
「高倉海鈴は既に藤原社長と結婚していますよ。結婚式は挙げていないものの、業界ではこのことを知っている人も少なくないはずです」と招待客が困惑した表情で言った。
「そうですよね!他の人が知らないのはまだしも、藤原奥様の両親が自分の娘が結婚していることを知らないなんて?」
「久保の奥様の高倉海鈴に対する態度を見れば分かりますよ。久保家は実の娘なんて全く気にかけていない。養女のことしか考えていない。その養女が藤原社長のことを好きだからって、夏目彩美は久保真美を藤原社長と結婚させようとした。自分の実の娘が藤原社長の正式な妻だということも知らずに」
「この一家は本当に変わっていますね!養女のために実の娘の夫を奪おうとするなんて?それに、その養女が高倉海鈴のために用意した部屋で細工をして、高倉海鈴を焼き殺そうとしたって聞きましたよ!」
「えっ?それは酷すぎます!あんな純真そうな顔をしているのに、まさかそんなことができるなんて!」
夏目彩美は久保統に引かれて遠くの席に座り、歯ぎしりしながら言った。「海鈴が藤原徹と結婚していたなんて、なぜ早く教えてくれなかったの?わざとよ!私たちを公衆の面前で恥をかかせるために!」
久保統も困り果てた表情を浮かべていた。もし早く高倉海鈴が藤原奥様だと知っていれば、こんな辛い思いをさせることはなかったのに。