この時、久保真美は撮影現場の監督控室にいた。
監督は熱心な表情で尋ねた。「久保さんは青山さんの妹さんですか?」
久保真美は微笑みながら、肯定も否定もせずに答えた。「私たち久保家と青山家は親密な付き合いがあって、私と青山博之は幼い頃からの知り合いです。」
監督はすぐに察した。久保真美が青山博之の妹でなくても、久保家のお嬢様であることには変わりなく、彼らには逆らえない存在だということを。
ただ、青山博之はこの役は自分が決めると言っており、久保真美と契約を結ぶには彼の同意が必要だった。しかし久保さんは出演料を要求せず、むしろ1000万円を投資し、男性主演の妹役を久保真美に演じさせることを要求してきた。
もし断れば、1000万円を断ることになるのではないか?
そのとき、プロデューサーが入ってきて、小声で言った。「青山博之さんは契約時に、この役には既に人選が決まっていると言っていました。もし久保真美さんと契約したら……」