第569章 社長が笑うと犬みたい

彼はサイズを見ただけでこの服が自分のために買われたものだと分かった。普段から黒と白の色合いを着ていたのは、高倉海鈴が落ち着いた優しい男性が好きだと言ったからで、だから彼は海鈴の好きな色とスタイルを選んでいた。まさか彼女がこんな服を選ぶとは思わなかった。

高野広は藤原徹の傍らに付き添い、彼の口角が徐々に上がっていくのを見て、思わず口を開いた。「社長、抑えてください。」

藤原徹：「？」

高野広：「実は笑わない方がかっこいいと思います。笑うと何か不気味な感じがして。」

藤原徹：「……」

「社長、今の様子が何に似ているか分かりますか？まるで尻尾を振って奥様の注目を乞う子犬みたいです。さっき見かけた子犬が、口を開けてニコニコしている姿が社長にそっくりでした！」

犬のよう？

藤原徹は黙り込んだ。

高野広は彼の沈黙を見て、好奇心から尋ねた。「社長、どうして黙っているんですか？」

藤原徹：「黙っているのは、君を修行に出すべきかどうか考えているからだ。」

高野広：「……」まずい！

その時、店内で支払いをしようとしていた高倉海鈴の後ろから、とても傲慢な声が聞こえてきた。

「この服、素敵ね。包んでちょうだい！山下涼介お兄様にプレゼントするわ！」

店員は一瞬戸惑い、彼女が自分の手にある服を食い入るように見つめているのを見て、急いで説明した。「申し訳ございません、佐藤様。こちらの商品は最後の一着で、あちらのお客様が先に……」

佐藤さんは苛立たしげな表情で「まだ支払いも済んでないのに何を言ってるの！私が欲しい物なら、支払いが済んでいたとしても、私に渡さないなんてことできないでしょう？」

高倉海鈴は目の前の佐藤さんを一瞥した。彼女は佐藤さんと四兄がどういう関係なのか知らなかったし、この佐藤さんに会ったこともなかった。

しかし店員たちがこれほど恭しい態度を見せているところを見ると、どこかの名家のお嬢様なのだろう。だからこそ、このように傲慢な性格なのだろう。

佐藤さんはボディーガードに命令した。「その服を奪い取りなさい！」

ボディーガードが威圧的に高倉海鈴に向かって歩いてきたが、高野司は素早く前に出て、ボディーガードの手を遮り、足を蹴り上げた。ボディーガードは悲鳴を上げ、慌てて数歩後退した。