第550章 衆人の目の前で否定できるのか？

「八尾さんは優しくて親切だと言われていますが、実際は演技で、ただのグリーンティービッチです！」

八尾夢子はその言葉を聞いて思わず体が震え、その優しい表情も徐々に歪んでいった。

彼女は拳を強く握り締め、長い爪が手のひらに食い込んでいた。

「約束通り、5%の株式を高倉さんにお渡しします」と陸田進は冷静に言った。

その時、八尾夢子の慕う者の一人の携帯が突然鳴り、通話を繋いだ途端に怒鳴り声が響いた。「この不肖の息子！頭がおかしくなったのか！我が家が東京で地位を確立できたのは、藤原社長のおかげだ。お前は藤原奥様に迷惑をかけるなんて、死にたいのか！」

「普段から遊び呆けているのは目をつぶってきたが、今度は家族全員を破滅させる気か？警告しておく。すぐに藤原奥様に謝罪に行け。さもなければ勘当だ。親子の縁を切る。お前の生死なんて知ったことではない！」

「八尾家のあの小娘のために家に大きな災いを招くとは、頭に水でも入ったのか！それに家の相続権も諦めろ。もう兄貴に譲ることに決めた。女に騙されるような愚か者に、家業を任せられるわけがない！」

その男は話を聞き終わると、その場で凍りついた。

兄と何年も争い、ようやく相続権を争える実力をつけたのに、八尾夢子のために一肌脱いだだけで、まさか……

「安藤さま、すべて私が悪いんです。海鈴が乗馬できるなんて思いもしませんでした」

八尾夢子は涙を浮かべ、か弱く話し始めた。その艶やかな体を若旦那に寄せ、甘えるように言った。「ご安心ください。これは私が原因で起きたことですから、損失は私が精一杯補償させていただきます」

安藤若旦那は最初怒りを感じていたが、自分の憧れの女性が優しく接してくれ、しかも今までにないほど近づいてきたことで、心の中の不満は一瞬で消え去った。

「夢子、助けてくれ。藤原社長のところで……」

「安藤さま、申し訳ありません。海鈴は私のことを嫌っているので、きっと藤原社長の前で私の悪口を言ったんです。だから……徹様があなた方を責めているんです。これは全て私の責任です」

安藤若旦那が口を開こうとした時、藤原明が突然横の椅子を蹴り、遊び人のような態度で言った。「どういうことだ？自分の過ちを高倉海鈴のせいにするのか？八尾夢子、演技はやめろ！」

八尾夢子は悔しそうに目に涙を浮かべた。