第571章 魂の拷問

高野広は眉をひそめて、「佐藤さん、耳が悪いようですね。もう一度言いましょう。あなたと犬は...入れません!」

この言葉を聞いて、佐藤愛美は信じられない様子で数歩後退り、顔色が青ざめた。先ほどは聞き取れなかったが、今の高野広の言葉は耳に残り、聞き逃すことはできなかった。

藤原徹は瞳を沈ませ、グレーブルーのコートに目を落とし、「包んでください」と言った。

その後、彼は高倉海鈴の手を取って店を出た。高倉海鈴は目の前の男性を笑顔で見つめながら、突然手の中に涼しい感触を感じた。

高倉海鈴が目を落として見ると、藤原徹が透き通った色の暖玉を彼女に渡していた。彼女は玉について詳しくなかったが、この暖玉がとても高価なものだということは分かった。確かにあるオークションで見たことがあった。

しかも、当時誰かがこの暖玉を1億円で落札したのだ。

「この玉は?」

「君へのプレゼントだ」

藤原徹は彼女の手を握り、優しい表情で言った。「数日後にこの玉を磨いてペンダントにして、君に着けてもらおう」

高倉海鈴は数秒間呆然とし、困ったように言った。「この玉は価値が高すぎます。コレクションとして保管した方がいいんじゃないですか?毎日首に下げているのは派手すぎませんか?」

藤原徹は眉を上げた。「派手?」

高倉海鈴は頷いた。違うのだろうか?

藤原徹は豪快に言った。「家にはこれと同じような暖玉が4つある。これはペンダントにして、残りはコレクションとして保管するか、指輪やイヤリングにしてもいい。派手だなんて気にする必要はない。君は藤原奥様なんだから、誰も文句は言わないよ」

「...?」数年前、この暖玉は1億円という高値で落札された。この品質は10年に一度見られるかどうかというものだった。なのに藤原徹は家にまだ数個あると言うのか?

高倉海鈴は一瞬混乱した。彼女は藤原徹の財力を過小評価していたようだ。想像以上に凄かった。

藤原徹は低い声で「この玉の名前を知っているか?」と尋ねた。

高倉海鈴が首を振ると、彼はゆっくりと話し始めた。「この玉は心の形をしていて、色は透き通っている。純粋な乙女の心のようだ。だからこの玉の発見者は『乙女の心』と名付けたんだ」