部屋のドアを開けると、広々としたベランダが目に飛び込んできた。内側に入ると、豪華な主寝室があり、その横には二つのウォークインクローゼットと広大な洗面所と化粧室が付いていた。
シャワールームの豪華なバスタブは6、7人が同時に入れるほどの大きさで、小さなプールのようだった。
主寝室の内側にはガラスドアがあり、それを開けると広大な屋外テラスがあった。そこには香り高い花々が咲き、洗練されたテーブルと椅子が置かれ、想像できるあらゆる設備が揃っていた。
「このテラスはお母さんが長い時間かけてあなたのために用意したの。屋外テラスにはまだたくさんスペースがあるから、好きなものを追加できるわ。お母さんは女の子がペットを好むかもしれないと思って、ペット用のスペースも用意したの。もし気に入らなければ、好きな用途に変更して、使用人に指示すればいいわ。」
西村秀次は少し緊張した様子で高倉海鈴を見つめながら、「家には女の子がいなかったし、あなたの好みもわからなかったから、この寝室のデザインは母が多くの貴族の令嬢に相談して、総合的に考えて決めたんだ。もし気に入らないところがあれば、すぐに改装させるよ。」
高倉海鈴は藤原徹を見上げた。いつもクールな藤原社長が西村家を選んだ理由が分かった。西村家は久保家とは全く違い、彼女に本当に親切にしてくれていた。
久保夫婦の実の娘である彼女は、久保家に戻った時は地下室に住まわされたのに、西村家は最高のものを全て与えようとしてくれた。
「妹、ここに住みたくないなら、それでもいいよ。この部屋はずっとあなたのためにとっておくから、いつでも戻ってきて泊まれるよ。どう?」西村秀次は優しく尋ねた。
高倉海鈴は花のように微笑んで、「ありがとう、五兄さん」と言った。
突然の「五兄さん」という呼び方に驚いたのか、西村秀次は照れくさそうに頭を掻きながら、「気に入ってくれて良かった。お礼なんて言わなくていいよ。家族なんだから、お礼なんて。ただの部屋の準備だよ。」
高倉海鈴は少し戸惑いを感じていた。初めて西村家の人々に会うので、まだ少し落ち着かない様子だった。
幸い、西村秀次は明るい性格で、彼女とカジュアルに話を続けた。「妹、西村家が'聖都の西村家'と呼ばれているのは知ってる?」
高倉海鈴はうなずいた。知らない人はほとんどいないだろう。