第587章 語れない秘密

「養女が30%の株式を持ち、政宗以上の株式を保有しているのに、実の娘には何一つないなんて、これが合理的だと思いますか?」藤原徹は冷ややかに問い返した。

「久保さん、あなたもご存知でしょう。名分は単なる呼び方に過ぎません。本当の身分の尊さを示すのは株式です。もし海鈴が株式を持っていなければ、彼女は永遠に真美の下に置かれることになります」

久保真美は歯を食いしばった。

絶対にダメ!株式は私のもの!

高倉海鈴のあの賤女、ずっと待ち構えていたのね。久保家に戻りたくないわけじゃなく、ずっと私の株式を狙っていて、この機会に私の株式を奪おうとしているのよ。

夏目彩美も同じように考え、慌てて口を開いた。「藤原社長!それは少し行き過ぎです!この株式は真美のものです。なぜ海鈴が戻ってきただけで奪わなければならないのですか?確かに海鈴は私たちの実の娘ですが、だからといって真美をいじめるのはよくありません!私たちはすでに譲歩して、海鈴を久保家のお嬢様として認めました。でも後継者の地位は変えられません。それは真美でなければなりません」

「海鈴には会社を経営する能力がありません。株式を全部彼女に渡したら、会社は彼女の手で潰れてしまいます!彼女は真美と争う暇があるなら、もっと勉強して優秀になるべきです。赤ちゃんの時に取り違えられたのは運が悪かっただけで、真美には何の関係もありません!」

西村奥様は怒りに目を見開いた。

藤原徹は表情を変えず、冷ややかに嘲笑した。「久保の奥様のおっしゃる通りです。海鈴は実の娘ですが、法律上、株式を実子に残さなければならないという規定はありません。藤原は決して強要はいたしません」

夏目彩美は彼が妥協したと思い、すぐに安堵のため息をついた。

「久保の奥様が藤原の要求を受け入れないのであれば、もう話し合うことはありません」藤原徹は冷たく言った。

久保真美の陰謀、久保政宗の殺人依頼、夏目彩美の侮辱、久保統の冷淡さ、すべてが彼の愛する弱い女性を傷つけた。30%の株式どころか、久保家全体を潰しても、彼の心の怒りは収まらないだろう。

20年間も外で暮らしていた娘に、彼らは一片の愛情も示さず、むしろ事件の張本人を久保家で大切に扱い、自分の娘を久保家に戻して更なる苦痛を与え、今では30%の株式という補償さえも渋っている。