第574話 エメラルドの指輪が消えた

久保真美は陰気な笑みを浮かべ、わざとらしく髪をかき上げ、手首の翡翠の腕輪を見せびらかした。

佐藤愛美はその翠の輝きに目を奪われ、すぐさま皮肉を込めて言った。「そうそう!西村家から贈られた宝飾品セットは、表姉さんだけにで、あなたにはなかったわね。これは価値の分からない翡翠の腕輪よ。表姉さんの祖母の西村奥様は表姉さんを本当に可愛がっているから、こんな高価な翡翠も惜しみなく贈ってくださったのよ!」

「それに腕輪だけじゃないわ。エメラルドの指輪もあるのよ!表姉さん、指輪はどこにいったの?」佐藤愛美は久保真美の指を見て、驚いたように尋ねた。

久保真美は慌てる様子もなく答えた。「さっき何個か指輪を試着したから、外して……」

言葉が途切れ、彼女は突然真っ青な顔をした。「私の指輪!指輪がどこにいったの?」