第600章 広島の鈴木家

客たちが次々と立ち上がり、好奇心に駆られて向かい側を見つめた。山下涼介が高倉海鈴の宴会場に行ったというのか?

山下涼介が誰のために誕生日パーティーを開くつもりだったにせよ、今や高倉海鈴の宴会場に入ったということは、彼と高倉海鈴の関係が浅からぬものだということを意味していた。

もしかして……久保家の実の娘である高倉海鈴は、久保真美以上に人脈があるということなのか?

久保真美は冷たい表情を浮かべ、「山下さんは妹の誕生日パーティーに来られたのですね。妹は20年も外で暮らしていたのだから、知り合いがいても不思議ではありません」

誰も何も言わなかったが、皆心の中では天秤にかけていた。山下家は一つだけだが、久保真美側のすべての名家を合わせたよりも格が上だった。

そのとき、秘書が慌てて駆け込んできて、喜色満面で言った。「お嬢様、秋山家の方がいらっしゃいました。贈り物も届きました」

帝京の秋山家?この名家までも久保真美の誕生日に来るというのか?

客たちは身震いした。この家は山下家と並ぶ名門だ。秋山家が来てくれたなら、もはや山下家と高倉海鈴に取り入る必要はないだろう。

久保真美の表情がようやく和らいだ。よかった、秋山家の人が来てくれた。

高倉海鈴と山下友希は親友で、山下涼介は山下友希の兄だと聞いている。だから山下友希の面子を立てて、高倉海鈴の誕生日に来たとしても不思議ではない。

久保真美の笑顔が徐々に戻ってきた。山下涼介が高倉海鈴の方に行ったとしても構わない。どうせ秋山家は彼女の方に来てくれたのだから。

彼女は優雅に口を開いた。「お父様、帝京の秋山若旦那がいらっしゃるなんて思ってもみませんでした。確かに一度お会いしたことがありますが、秋山さんはとても気さくな方でした。今から秋山さんをお迎えに行きましょう。失礼のないように」

その言葉が終わるか終わらないかのうちに、秘書が慌てた様子で言った。「お嬢様、行く必要はありません。秋山若旦那は贈り物を届けさせただけで、車から降りるとすぐに二番目のお嬢様の宴会場へ向かわれました」

会場は静まり返り、まるで雷が心の中で炸裂したかのようだった。

これまでの客は先に高倉海鈴に贈り物を渡し、それから久保真美の方に座るというのが通例だった。今や秋山若旦那は久保真美に贈り物を届けさせただけで、直接高倉海鈴の方へ行ったのだ。