第612章 特別ゲストが変更に

監督は一瞬黙り込み、体が微かに震えていた。

しかし、藤原財閥のバラエティ番組の監督を務めるだけの実力は持っていた。冷静さを取り戻し、すぐに答えた。「分かりました、藤原社長。実は最初から二人の特別ゲストを予定していましたので、もう一人の女優を呼んで対応させていただきます。」

藤原徹は低い声で「ああ」と返した。

この大物が満足したのを見て、監督はようやく安堵の息をついた。「藤原社長、よろしければ...ステージをご覧になりますか？」

藤原徹は手を振って断り、威厳のある口調で言った。「言いつけたことをしっかりと処理しろ。」

「はい、必ずきちんと対応させていただきます。」

監督は頭を下げながら藤原徹を見送り、その背の高くまっすぐな姿が廊下の奥に消えるのを見届けると、緊張していた体がようやく緩んだ。そして助手に諦めた様子で指示を出した。「すぐに笠井杏に電話して、先に番組に出てもらうように。」

助手は困った表情を浮かべた。「でも、村上由佳も手ごわい相手ですよ。彼女が同意しなかったら、もめ事になったらどうしましょう？」

「彼女はもう藤原社長の逆鱗に触れたんだ。これからこの業界でやっていけるわけがない。我々が手を下さなくても、藤原社長が処理してくれるさ。そんな彼女を番組に出したら視聴率に影響が出るだけだ！」監督は冷ややかに鼻を鳴らした。「まったく運が悪い！こんな馬鹿な奴を呼んでしまうなんて、藤原奥様に向かって説教しようとするなんて！」

助手は「村上由佳の話では、久保真美の仕返しをするつもりだったそうです」と言った。

「久保真美か...」監督は唾を吐いた。「あの二人は親友だけあって、カメラの前では柔らかくて弱々しく見えるのに、裏では攻撃的で陰湿で狭量だ。こんな連中と仕事するのは面倒だ。さっさと交代させた方がいい。」

「そんなことを考えている場合じゃない。急いでスタッフに特別ゲストが変更になったことを知らせろ。」監督はイライラした様子で指示を出した。番組がもうすぐ始まるので、気を引き締めなければならなかった。

……

一方、木村香織は高倉海鈴を衣装室に連れて行き、自分がデザインしたドレスを着た彼女が出てくるのを見て、目を輝かせた。「わあ！このドレス、あなたにぴったりね！このハイクラスな雰囲気を出せるのは、あなただけよ！」