第650章 謝罪には誠意が必要

そのとき、高野司がノックして入ってきた。「藤原社長、久保の奥様と久保真美が来ています。」

藤原徹はそれを聞いて、すぐに眉をひそめた。この母娘は本当にしつこい、一体何がしたいのだろうか？

断ろうとした時、ドアの外から夏目彩美の声が聞こえてきた。「ご苦労様です。私を案内してくださって。社長夫人の母親とはいえ、私は気さくな人間ですから、そんなに気を遣わないでください。」

話しながら、夏目彩美はドアを開けて入ってきた。「藤、藤原社長、海鈴はいますか？」

藤原徹の表情は冷たかった。高野司は心の中で分かっていた。藤原財閥への来客は全て受付で登録し、社長室に電話で確認し、藤原徹が面会を承諾した後でなければ案内できない。ただし、社長の親族など特別な人は例外だった。

受付は夏目彩美が奥様の母親だと聞いて、すぐに丁重に案内したが、これは藤原徹の大きなタブーに触れることだった。

高野司は夏目彩美と久保真美を見て、探るように尋ねた。「社長、彼女たちは…」

藤原徹は顔を上げず、表情は見えなかったが、冷淡な声で言った。「このままにしておけ。」

彼は母娘の考えをよく理解していた。高倉海鈴がオフィスにいない間に、久保真美に誘惑させようというのか？

この久保真美は何を考えているのか！もしかして以前も同じことをして、別の藤原徹を誘惑し、そいつも受け入れたのか？

藤原徹は怒りに燃えた。あの男がそんなことをして、どうして高倉海鈴を愛していると言えるのか？あんな弱い女性が、夫の裏切りを知ったら、どれほど傷つくことか！

いや！だめだ！そんなことは絶対に許さない！

夏目彩美はオフィスを見回し、高倉海鈴が本当にいないことを確認すると、すぐに笑顔になった。「藤原社長、真美のことを怒らないでください。この子は衝動的で、間違いを犯しやすいのですが、心は優しいんです。会社に来たのは海鈴に謝りたいだけなんです。二人とも私の娘で、どちらも大切なんです。二人が仲違いしているのを見るのは辛いんです！」

「書き終わった？読んで聞かせてください。」藤原徹は冷たく言った。

夏目彩美は戸惑った。「読む…何を？」