第682章 ピンク色の透かし彫り花瓶

藤原徹は慵懶な声で言った。「おばあさまの誕生日が近いんだ。藤原家で誕生パーティーを開くから、その時は一緒に来てくれ」

高倉海鈴は頷いて承諾し、慌てて寝室を出た。

彼女が逃げるように去っていく姿を見て、藤原徹は口角を上げ、ベッドサイドテーブルの引き出しから一枚の紙を取り出した。そこには一行の文字が鮮明に書かれていた。【余計な考えは持つな】

藤原徹は昨夜眠りに落ちる前の温かい抱擁を思い出した。高倉海鈴の柔らかな手が彼の腰に回されていた時の感触は本当に堪らなかった。そして笑いながら一言残した。【突然、可愛い妻がいるのも悪くないと思えてきたな】

……

高倉海鈴が朝食を済ませると、藤原明から電話がかかってきた。「おばあさまが誕生パーティーを開くって知ってる?」

「全く分からないよ。おばあさまは体調も良くないのに、なんで誕生パーティーなんて開くんだろう。何か重要な発表があるって聞いたけど。海鈴、おばあさまへのプレゼント決めた?よかったら一緒に選びに行かない?」