第735章 師匠拝見の宴

伊藤仁美は息を呑んだ。斎藤さんがこんな質問をするとは思わなかった。実際、彼女は絵画のことは全く分からず、この絵の真髄も見抜けなかった。

そのため、斎藤さんがこの質問をした時、伊藤仁美は心臓が震えた。幸い、責任者と斎藤さんは絵に集中していて、彼女の様子の変化に気付かなかった。

その時、斎藤さんはまだ感嘆していた:「この絵は本当に素晴らしい!私でさえ、これほど完璧な作品は描けないかもしれない!ただし、この絵の作者は二人だと確信できます。最後の二筆は単純ですが、この絵に色彩を加えています。伊藤さん、あなたは絵を完成させた人ですか、それとも最後の画龍点睛をした人ですか?」

伊藤仁美は考えた。先ほど斎藤さんはこの絵の作者は女性で、その二筆を加えたのは男性だと言った。そのため、伊藤仁美は答えるしかなかった:「この絵は私が描いて、後からの二筆は友人が加えたものです。」

斎藤さんの目は賞賛に満ちていた。「素晴らしい!本当に素晴らしい!この絵は私がここ数十年で見た最も完璧な作品です。あなたの技術と手法は私も及びません!」

伊藤仁美は褒められて有頂天になり、この絵がこんな予想外の収穫をもたらすとは思わなかった。

「伊藤さんには師匠がいらっしゃいますか?」斎藤さんは単刀直入に尋ねた。

伊藤仁美は心の中の興奮を抑えて、穏やかに笑って答えた:「まだいません。」

「では、伊藤さん、私の弟子になっていただけませんか?」斎藤さんはずっと弟子を取りたいと思っていた。今やっと完璧な弟子を見つけた。しかも、彼女のレベルは自分をも超えており、将来必ず大きな成果を上げるだろう。

伊藤仁美は笑顔で頷いた:「もちろんお願いします。斎藤さんが私を弟子にしてくださるなんて、光栄です!」

「よし!」斎藤さんは嬉しそうに顔を赤らめた。「仁美、私の內弟子として迎え入れ、特別に師匠拝見の宴を開いて、公に身分を宣言しましょう。」

伊藤仁美は優しく微笑んだ:「ありがとうございます、師匠。」

斎藤さんは一通り褒めた後、一週間後に東京で師匠拝見の宴を開くと告げた。その時は業界の著名な画家たちを招待し、もちろん東京の有力者家族も含まれる。

伊藤仁美は宴会の主役として、家族や親戚、友人を招待することもできる。しかし、彼女の家族や友人は全て京都にいて、今の東京には妹の伊藤洋美と竹屋亮しかいない。

……