「実は、これは藤原徹の作品なんです。もしかして、藤原徹はおじいちゃんが好きだったあの画家なのかもしれません」高倉海鈴は探るように尋ねた。
「そんなはずがない!」山下涼介は即座に否定した。「海鈴、よく考えてみて。おじいちゃんは二十年も絵を描いてきて、突然あの画家のことを好きになったんだよ。あの画家はおじいちゃんよりもっと長く絵を描いているはずだけど、藤原徹は今年まだ二十六歳だよ。そんなことありえないでしょう?」
高倉海鈴は考え込んで、確かにその通りだと思った。おじいちゃんが好きだった画家は四、五十代のおじさんか、おじいちゃんと同年代の先輩画家のはずだった。
山下涼介は続けた。「たとえ藤原徹が絵の才能があったとしても、絶対におじいちゃんが好きだったあの画家ではないはず。それに数年前に調べたところ、あの画家はもうこの世にいないらしいんだ」