藤原徹は灼熱の目で高倉海鈴を見つめ、静かに尋ねた。「そんなに彼に会いたいのか?」
高倉海鈴は慌てて頷いた。展覧会に来ることを承諾した最大の理由は冬島志津のためで、自分の憧れのアーティストがどんな人物なのか見てみたかったのだ。
藤原徹は軽く口角を上げ、笑いながら言った。「もしかしたら、既に会っているかもしれないよ。ただ、その人が冬島志津だと気付いていないだけで」
高倉海鈴は少し考え込んだ。冬島志津に会ったのだろうか?先ほど多くの人に会ったが、誰一人として冬島志津らしい人はいなかった。
「藤原奥様、もう一度よく考えてみてください。ある人の絵が……」
藤原徹の言葉が途切れたその時、穏やかな男性の声が聞こえてきた。「高倉さん、また会いましたね」
高倉海鈴は振り向かなくても誰が来たのか分かっていた。振り返ると案の定、陸田進の冷たくも笑みを含んだ瞳と目が合った。